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初めての会話
「私、何時も貴方が何を描いているのか気になっていたんです。」
柔らかい笑みとともに俺に近づいてきた。
…俺には彼女の姿が眩し過ぎた。
これ以上近寄らないで欲しい。
でなければ、自分の世界がなくなりそうで仕方なかった。
「すみません、やっと話せると思ったら一人で興奮して…。」
恥ずかしそうに頬を赤らめては、視線をそらした。
「…何時も見てたんですか、俺なんかを。」
「はい!気になって…ダメ…でしたよね。」
「いや、そういう意味ではなくて…。」
表情をころころ変える彼女を見ていたら、心にぽかぽかしたものが流れてきた。
「あっ、私まだ名乗っていませんでしたね。」
そう言うと、きらきらした表情を浮かべて
「私、水野優香です。大学院に通っています。」
「…木戸川康介。画家…。」
「えっ…画家さんなんですか?!」
「まだ見習いですけど…。」
ずり落ちてきた黒縁眼鏡を押し上げては、早く…時間が過ぎて欲しいと願ってしまった。




