出会い
何時もの様に
ただスケッチをしていた。
それだけで満たされていた筈だったのに。
何故だろう。
君に会って、俺は変われた。
「……っ…約束よ?」
君は誰なんだ?
けたたましいアラームの音が鳴り響き、安らかに寝ていた俺を現実に引き戻してくれた。
「…シャワーでも浴びるか。」
去年から、実家を離れてようやく一人暮らしにも慣れてきた。
無造作に服を脱ぎ捨てては、つまみを捻り熱いお湯を頭からかぶる。
寝ぼけていた思考が動き出してきた。
そういえば、今日みた夢は何だったのだろう?
何処か懐かしい気持ちになった。
誰かはわからない、だが…遠く昔に会ったことがある…そんな懐かしい夢だった…。
シャワーを浴び終えると、軽い朝食を取り何時もの日課、スケッチブックに筆記用具、今日の気分で画材を選び、家を飛び出した。
最近まで寒い日が多かったが、今日は普段よりも暖かい陽気だ。
ふと上を見上げては、淡いピンク色の綺麗な桜が咲き始めていた。
嗚呼…また春がやってきたのだ。
何故だろう。
今日は良い絵が描けそうな予感がする。
しばらく歩くと、小さな公園が見えてきた。
今日はここで描いてみるか。
まだ朝早いせいか、誰もいない。
好都合だ、あまり人には会いたくないからだ。
「綺麗だ…。」
この公園のシンボルだろうか?
少し小さな丘の上には、大きな桜の木がある。
まだぽつぽつとだが、少し桜が咲いていた。
「描くか…。」
小さな呟きと共に、スケッチブックに鉛筆でラフな線を描いていく。
やはり、絵を描いていると心が落ち着ける。
誰にも邪魔されず、自分の世界にのめり込める。
たとえ自分の周りにしか色がついていなくても、俺には関係ないことなのだ。
それがよくない事だとしてもだ。
少し邪念を振り払い、また集中しようと桜を見上げると…。
そこには桜ではなく
一人の女性がいた…。
いつの間にいたのだろう?
いままで気がつけなかった。
「あのっ…何時もスケッチしている方ですよね?」
「何故それを?」
すると女性は、柔らかい笑みを浮かべては、
「何時も見かけていたのです。」
「そうですか…。」
これが、彼女との出会いだった。




