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桜の木の下で  作者: 吉野美羽
春の章
1/7

出会い

何時もの様に



ただスケッチをしていた。



それだけで満たされていた筈だったのに。



何故だろう。



君に会って、俺は変われた。














「……っ…約束よ?」



君は誰なんだ?





けたたましいアラームの音が鳴り響き、安らかに寝ていた俺を現実に引き戻してくれた。



「…シャワーでも浴びるか。」



去年から、実家を離れてようやく一人暮らしにも慣れてきた。


無造作に服を脱ぎ捨てては、つまみを捻り熱いお湯を頭からかぶる。



寝ぼけていた思考が動き出してきた。


そういえば、今日みた夢は何だったのだろう?


何処か懐かしい気持ちになった。


誰かはわからない、だが…遠く昔に会ったことがある…そんな懐かしい夢だった…。




シャワーを浴び終えると、軽い朝食を取り何時もの日課、スケッチブックに筆記用具、今日の気分で画材を選び、家を飛び出した。



最近まで寒い日が多かったが、今日は普段よりも暖かい陽気だ。


ふと上を見上げては、淡いピンク色の綺麗な桜が咲き始めていた。


嗚呼…また春がやってきたのだ。






何故だろう。



今日は良い絵が描けそうな予感がする。





しばらく歩くと、小さな公園が見えてきた。



今日はここで描いてみるか。



まだ朝早いせいか、誰もいない。



好都合だ、あまり人には会いたくないからだ。





「綺麗だ…。」



この公園のシンボルだろうか?


少し小さな丘の上には、大きな桜の木がある。


まだぽつぽつとだが、少し桜が咲いていた。



「描くか…。」



小さな呟きと共に、スケッチブックに鉛筆でラフな線を描いていく。



やはり、絵を描いていると心が落ち着ける。



誰にも邪魔されず、自分の世界にのめり込める。



たとえ自分の周りにしか色がついていなくても、俺には関係ないことなのだ。



それがよくない事だとしてもだ。


少し邪念を振り払い、また集中しようと桜を見上げると…。





そこには桜ではなく



一人の女性がいた…。





いつの間にいたのだろう?



いままで気がつけなかった。




「あのっ…何時もスケッチしている方ですよね?」



「何故それを?」



すると女性は、柔らかい笑みを浮かべては、



「何時も見かけていたのです。」


「そうですか…。」







これが、彼女との出会いだった。


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