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翼を失った竜と血塗られた聖女  作者: 小鳥遊輝
第三章 闘技大会編
37/69

第拾弐話 エキシビション戦/闘技大会終了

[2011/12/20]一部ミスを修正

[2011/12/30]変換ミスを修正×2

『さぁ、本日は誰もが入学以来抱いているはずの疑問、何故Sランク1位はいないのか?本当にSランク1位はいるのか?その疑問は今日明らかになります。本日行われるエキシビション戦でその姿が明らかになる。対戦相手はランク外から優勝したセリーナ・エインフェリア三年生。さて、この勝負どうなるのでしょうか!』







 +++ † +++







 エキシビション戦。


 セリーナ・エインフェリア(ランク外)VSセフィ・ティスリーン(Sランク1位)


『まさかまさかの展開で本日の試合が決定いたしました。教師陣すらその姿を見たことがないとまで言われている最強の生徒セフィ・ティスリーン一年生。入学初日でSランク1位になって以来何十年も留年し続けSランク1位の座を空席とした人物です!

 対し、セリーナ・エインフェリア三年生は、今期の編入生。編入時は戦闘試験官を倒し、魔法試験官はその才能に驚いたとのことです』


「まあ、確かにそうなんですがね……」


 コロシアムにはセリーナしかいない。始まるまで出てこないつもりだろう。


『おおっと、今教師に紙を渡されました。えぇ何々。セフィ一年生の登場は皆さんで盛り上げてください?

 わっかりましたーー!では、皆さん、一斉に呼んでみましょう!』


「あの子は何をしたいんだか……」


 あきれるセリーナ。


『では、いきましょう!せーの!』


「「「「『セフィーさーん!』」」」」


 大きな声で名前を呼ばれる。その声に応答するように声が響き渡った。


「はーい!」


 すると、空に小さな黒い点が現れ、コロシアムの中心近くに着地した。


「はーい、皆さん初めましてーー!セフィ・ティスリーンでーす!」


 やたらと高いテンションで現れたのは、セリーナの予想通りの人物セフィリア・ティス・アインスフィアであった。


 ちなみに会場はアイドルが現れたみたいに大盛り上がり。まさか、Sランク1位がこんなに小さく可愛い女の子だとは思っていなかったのだろう。


『な、なんと!セフィ一年生は小さな女の子だったーー!』


 煽る司会。盛り上がる会場。熱気の増すコロシアム内。やる気の失せるセリーナ。


「セフィ……。あなた、何がしたいのよ……」


「何って、お姉様だけ楽しんでずるいです。私だって暇を持て余してるんです!」


 駄々っ子のように言うセフィ。もちろん、会場の皆さんには二人の会話は届いていない。不幸中の幸いか?


「別に楽しみたくてやっているわけじゃないわ。私としても少し気になることがあってここにいるわけだし」


「だとしても、お姉様だけずるいです。私はこのメアスフィアから出られないんです。少しくらい付き合ってくれてもいいじゃないですか……」


「やらないとは言ってないわ。だけど、抑えなさいよ?私たちがやりあったら、最悪観客席にかけられている防御結界壊すわよ?」


「分かってるもん、そんなことくらいは」


「なら、よろしい。やりましょうか」


 セリーナとセフィが構える。ちなみに、一昨日あれだけの剣を取り出したので、セリーナは武器を持っていない。セフィも同じく持ってはいない。


『おおっと、すでに対戦者達は準備万端のようです。では始めちゃいましょうか!

 レディー、ファイ!』


 始まった瞬間だった。セフィは一冊の本を手に取りだし、何か呪文らしきものを唱え始めた。


検索(サーチ)。剣召喚」


「な!?」


 セリーナはセフィが何をやっているか気づいた。だが、時すでに遅し。


発見(ディスカバリー)読み取り(ロード)。【剣召喚(サモンソード)】&【剣舞(ブレイドダンス)】~」


 発動されたのは剣を作り出し召喚する魔法と剣を操ることのできる古代魔法。


「っ!?」


 セリーナも、空間を割り武器を取り出す。取り出したのは先端が垂直に曲がった大きな二本の大剣。


 手に取ると、すぐに剣を振るう。剣が振るわれると同時に甲高い音が響く。すでにセフィの魔法の制御下におかれた剣達が迫っていたのだ。


「くっ!」


 応戦するセリーナ。だが、制御されている剣は異常なスピードで飛んでくる。しかも、剣にも種類があり防ごうにもいくつもの方法を取らなければならない。


 まずは、刺突剣。レイピア・エスットック等に代表される剣で突き刺すことを目的とした剣で斬ることにはあまり着眼点を置いていない。その為飛んでくる際には猛スピードで真っ直ぐ先端を向け飛んでくる。

 次に、片手剣。まさしく普通の剣だが、応用の幅は広い。刺突とまではいかないが突くこともできるし、斬ることもできる。様々な攻撃を仕掛けてくるため、しっかりと見ていなければやりづらい。

 大剣。重さを使い威力を増すことを主眼とした剣。一撃一撃が重く、防ぐにも力が必要。攻撃の幅は片手剣と同じく広いが、動作が大きく見極めるのは楽だ。しかし、分かったからと言ってほかの攻撃のある中簡単には防げない。

 刀。まさしく斬るための武器。剣は叩き割るといった使い方になるが、刀とは断ち切ることを目的としている。鉄すらも斬れるほどの力を持っているため、最悪武器を壊されかねない。まあ、技術がなければ難しいので鉄を切るような攻撃は飛んでこないのだが。

 最後にソードブレイカー。剣を壊すことを目的としている武器。攻撃には特化していないが武器を壊すことにおいてはかなり優秀。セリーナの持つ大剣を壊しに来るので避けざるを得ない。


 必死に応戦するセリーナだが、少しづつ傷が増えていく。そんな中、セリーナは念話でセフィと会話をしていた。



(セフィ!)


(どうしたのお姉様?)


(あなた何考えてるの!アインスフィアの秘匿をそんな簡単にさらして!)


(ああそのこと?

 大丈夫だって。お姉様の持ってる全てを記せし(ロスト)禁断の書庫(ライブラリ)と違って、こっちはただの魔法書にしか見えないから)


(そういうことを言ってるんじゃない!)


(だって、こうでもしないとお姉様との勝負が勝負にならないでしょ?はっきりって私弱いもの)


「くっ!」


 その通りなのだ。ハッキリ言ってセフィは弱い。肉体面はどう見ても少女。筋力がまともにあるはずもない。守護精霊なので防御面は最強だが。

 その守護精霊であることもネックなのだ。何かをつかさどっている精霊は、つかさどっている属性の魔法しかまともに扱えない。セフィは守護をつかさどる精霊だ。攻撃魔法など使えない。


 では、何故強いのか?それは彼女らの持っている本が関わっている。


 全てを記せし禁断の書庫と現在を記せし(セカンド)禁断の書庫(ライブラリ)。この二つはアインスフィアの一族が代々受け継いできたものだ。そこに記されているのは普通ではないことばかりである。全てを記せし禁断の書庫には失われた過去のすべてが。現在を記せし禁断の書庫には現在の歴史のすべてが記されている。


 現在を記せし禁断の書庫には全ての魔法が書かれている。その性質上、一度でも使われたことがある魔法ならこの本に記され、使うことができる。セフィはその性質を利用して、使えない魔法を使っているのだ。


「やあ!」


 セリーナの使う先端が垂直に曲がった大きな二本の大剣・ディシオム。ルークとの戦闘で言ったとおり、この剣には魔法を弾く能力がある。しかし、セフィの出した剣は魔法で召喚されているとはいえ実体を持った本物の剣である。その為、弾くことはできない。だが、実体を持っている以上は壊れる。だからセリーナは一本づつではあるが、着実に壊していった。


 セリーナがすべての剣を壊し終わりセフィの方を向くと、既にセフィは次の魔法を発動させようとしていた。


「発見!読み取り!【虹の閃光】!」


 発動したのは一昨日の試合でルークが使った魔法。だが、込められている魔力のケタが違う。その威力はルークの数倍はあるだろう。


「くっ!」


 セリーナは決断した。迷ってる暇はないと。


全てを記せし(ロスト)禁断の書庫(ライブラリ)!」


 出てきたのはセフィの持つ本よりも古ぼけた一冊の本。


「検索!最強の楯!発見!読み取り!すべてを(シールド)守りし(・オブ)絶対の盾(・アイギス)!」


 現れたのは昨日の魔法で発現した楯よりも小さく、人が手で持つような大きさの楯。


 セフィの放つ虹色の極光がセリーナを飲み込む。光が会場に弾け、砂埃が舞う。


 光が終息し、しばらくすると砂煙も晴れた。そこには無傷で立っているセリーナがいた。


「あの子、一回しばき倒してやりましょうかしら」


 被害も考えず、強力な攻撃をしたセフィに怒りを覚えてるようだった。


「もう、いいわ。こっちも本気でやらせてもらうわ。

 検索、魔法を無効化する武器!発見、読み取り!魔を断つ槍(ゲイ・ジャルク)!」


 セリーナが取り出したのはありとあらゆる魔法などを無力化し、攻撃を与える魔の槍。


「これで、あなたの防御はすり抜ける!」


 セリーナの目はどことなく怒りの色を見せていた。


「え?ちょっ!まって!」


 セフィは焦って逃げ惑う。精霊は半分は魔法で体が構成されている。その為、魔を断つ槍の攻撃を食らえばタダでは済まない。


「お姉様!それ冗談じゃ済まない!」


「お仕置きだもの!冗談なわけないじゃない!」


 セフィにしたらたまったものではない。命をかける戦いでもないのに命をかけているのだ。


 逆にセリーナにとっては妹に対するお仕置きだ。その為、考えなしに取り出した武器をあてればどうなるかも考えてなかった。


「死ぬから!それ当てられたら私死ぬから!」


「じゃあ、10分逃げきってみなさい!そしたら、違うのに変えたげる!」


 その後、10分間に渡り、セフィは必死に逃げ回り、セリーナはそれを追うなまはげの如き様相を見せながら攻撃を仕掛け続けた。




「はぁはぁ、死ぬかと思った。というか、当たれば死んでた……。よく逃げ切った私!」


「意外と頑張ったじゃない」


「ひどい!?」


 セリーナの言葉に反応するセフィ。ああ、ついでに言っておくが、彼女らの言葉は会場の皆様には届いておりませんのであしからず。


「かなりの魔力使ったよ……。さすがにもう使わないで……、当てられたら本当に死ぬから、というかこの国終わる……」


「わかったわよ。さすがにやりすぎたとは思っているもの」


 そう言い、魔を断つ槍を消す。


「でも、そう簡単には終わらせないから」


「うぅ。なら私も本気で行くから!

 検索、高速移動!発見!読み取り!【電光石火(ソニックムーブ)】!」


 高速移動の魔法を発動させるセフィ。対してセリーナは、


「検索、夫婦剣!発見!読み取り!干将莫邪!」


 取り出したのは中国の夫婦剣。


 セリーナは神威のスピードに対応しきったが、毛色の違う魔法である【電光石火】には対応できるのか?答えはYESだ。

 【電光石火】は確かにスピードを上げるのに適した魔法だが、使い方を分かっているものには対応もしやすいのだ。


 だから……、


「速さで攻めるのは間違いよ!」


 干将を投げる。干将は何もない空間へと飛んでいくがたどり着くと甲高い音が鳴り、そこには剣を構え防御をとったセフィがいた。


「っ!

 さすがお姉様。これ位は余裕みたいですね!なら!

 検索、瞬間移動!発見!読み取り!【瞬間移動(テレポート)】!」


 【電光石火】を超えるスピードでの高速移動術、【瞬間移動】。ほとんど空間移動に変わらない速さで動くことから空間移動の名を冠すほどである。


「さすがね。でも、それも浅はかな考えよ」


 干将が手元に戻ってくる。夫婦剣であるこの二つの剣は互いに引き合う。そのため、片方を持ったまま呼べば戻ってくるのだ。


 戻ってきた剣を手に取り、セリーナは魔法を発動する。


「【電光石火】!」


 二人の姿が会場からかき消えた。だが、消えたものの剣と剣を打ち合う甲高い音が会場中に響き渡る。


(なんで、なんでついてこられるの?)


 セフィ疑問に思う。【瞬間移動】と【電光石火】とでは段違いに速さが違うのだ。なのにも関らずセリーナは何事もなく【電光石火】で【瞬間移動】についてくる。


「なんでかしらね?」


「!」


「簡単な話よ。スピードだけなら確かに【瞬間移動】の方が早いわ。でも、【瞬間移動】は動きまわることを想定して作られていない。だから、機動性に欠けるの。対して【電光石火】は動きまわることを前提に作られた魔法よ。だから、ただ速く動きまわる【瞬間移動】に【電光石火】でついていけるのよ」


 そう言われ、セフィは魔法を解除する。それと同時にセリーナも解除した。


「やっぱり、敵う気がしないな」


「あら、意外とやってるわよ?相手が悪かっただけで」


「だよね。でも、お姉様に最初から勝てるとは思ってなかったし」


「勝つ気がないとか言わないの。観客に失礼よ」


「うん。そうだね。だから、最後に一発やるから」


「そう、じゃあ、私もやり返すわ」


 そう言いあい距離をとる二人。そして、詠唱を開始した。


「検索、大砲撃魔法!発見!読み取り!【神の裁き(ジャッジメント)】!」


「検索、雷鎚!発見!読み取り!トールの雷鎚(ミョルニル)

雷神の鎚(トールハンマー)】!」


 セフィが大威力の砲撃魔法を、セリーナが神の使った武器の一撃を放つ。


 力は均衡し、互いにその威力を削っていく。互いに魔力の限界近くまで注ぎ込み、決着へと向かっていく。


 そして均衡が崩れる。押し切られたのは……、セフィだった。セリーナの【雷神の鎚】がセフィの【神の裁き】を上回ったのだ。


「ああ、やっぱりお姉さまには勝てないか~」


 そんな暢気な言葉を言いながら、セフィは黄色い閃光に飲み込まれた。







 +++ † +++







『それでは表彰式に参ります。優勝者セリーナ・エインフェリア三年生。壇上へ。続いて準優勝ルーキス・M・アインスフィア三年生、三位ミア・シア・カシミア三年生、同じく三位黄泉瀬神威三年生。壇上へどうぞ』


 その言葉に4人は壇上へと向かう。エキシビションはセリーナの勝利で終わり、セフィはそのまま学校を辞めることを宣言し一位の座を開け去っていった。


 本当は何をしたくて戦ったのかはわからなかったセリーナだが、セフィが満足そうな顔をして去って行ったので「まあ、いいか」と納得していた。


 結果、Sランクは入れ替わりは行われず、一位にセリーナが入ることになる程度で終わった。BランクとAランクは多少入れ替わったようではあるが。


『表彰。セリーナ・エインフェリア三年生』


 仰々しく行われる表彰式。こうして、セリーナの最初で最後の闘技大会が終了した。







 +++ † +++







「セフィリア様、大丈夫ですか?」


「あんまり良くないかな……。ちょっとはしゃぎ過ぎたかも……」


 王宮の奥の中庭でセフィはけだるそうに答える。その姿を見るに闘技大会のエキシビション戦だけの疲れだけではなさそうに見えた。


「お姉様にはやっぱりばれちゃったみたい。隠しときたかったんだけど……」


「仕方ありませんよ。セリーナ様ですから」


「そうだね~」


 そう言い、セフィは体を持ち上げ紅茶を軽く飲む。


「近いうちに一度お姉さまを呼んで事情を説明しようと思うんだけど、クリスはどう思う?」


「良いんではないでしょうか。このままでは、大変なことが起こるのは目に見えているのですから」


「そうだね~。


 まったく、誰だろうね。王都陥落なんて狙ってるバカな人は」


 セフィのつぶやきは暗い空へと吸い込まれ消えていった。

ようやく3章終りです。

次回はシリアス展開へ持っていけそうです。

(武器がFate関係ばかりですね……。もうちょっと考えられらえば良かったんですが……)


感想等お待ちしております。

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