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翼を失った竜と血塗られた聖女  作者: 小鳥遊輝
第一章 聖女覚醒編
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第玖話 大老熊ベヒーモス

遅れてすいません。

[2011/10/22]一部表現を修正

[2011/12/20]一部ミスを修正

 簡潔に言おう。浅慮だったと。


「うわぁ。最悪ねこれは…。こんなのとやるのはさすがに嫌ね…」


 思わずセリーナは言葉を漏らした。


「我も思いもよらなんだ。ここまでの大きさに育っているものを見るのは初めてであるぞ」


 体を普通の狼並みの大きさに変えたフェンリルが言った。




 そこには大老獣の一角であるベヒーモスがいた。







 +++ † +++







 時は少しさかのぼり、ビルレッティとファリアナは近くにあった泉で休憩していた。


「いいんですの、ビル?こんなとこで休んでて」


「いいのさ。私たちが行っても足手まといになるのは目に見えた強敵だよ。あの洞窟の前から感じた気配だけで嫌になったよ」


 ビルレッティはファリアナに説明する。


「あの洞窟に何がいるのかは分からないけどあたしらに出来ることはなにもないよ。とてもじゃないけどあそこにいたのは肌で感じれただけでもA+ランク以上だったよ。洞窟の奥からはなってる気配だけでそれだけ感じるんだ。推定する限りあそこにいるのはS+ランク級のものが居てもおかしくないよ」


 そう言うと、ビルレッティは酒をあおった。


「あたしらももっと強くなりたいね…。肝心な時に人にまかせんとあかんなんて悔しいよ…」


「そうね。もっと強くなってたくさんの人を守れるようになりたいわ…」


 そう言ってファリアナは向かい酒でビルレッティに答えた。







 +++ † +++







 大老獣とは異常なほどの力や生態を持つ魔物の一部をその強さから特別扱いするために付けた名称である。

 大老獣には様々な種がいるとは言えないが、その中には一匹だけで国を破壊したといわれている魔物もいる。しかも、大老獣のほとんどが名前付きに匹敵する実力を持つため、個別に名前を付けることはないが、その種としての強さはまさに別格なのある。


 ここにいたベヒーモスもその大老獣の一匹である。

 大老熊(たいろうゆう)ベヒーモスと呼ばれるこの魔物は、過去様々な村や町を破壊したとされている。知能はそこまで発達してはいないもののその獰猛さからSランク以上の実力者ですら数人がかりでないと倒せないといわれるほど強い魔物である。


 そんなベヒーモスだが大きさは大きくても15メートルあればいいほうだという。だが、ここにいたのはその倍、30メートルの大きさを誇るほどのものだった。


 そんなわけで冒頭に戻る。




「あり得ない。こんなのをどうにかするなんて簡単に言えるほど私も自分を過信してないわよ…」


「うむ。最悪大きな都市一つを一晩で廃墟に変えるなど何の問題もなくやってのけるであろうな」


 そんなことをしゃべっているとベヒーモスはこちらに気付いたようだ。そして、叫び声をあげた。


「うがああああぁぁぁあぁぁぁああうううぅぅぅぅぅあああぁぁっっ!!!」


 その声は洞窟全体に響き渡り反響した。その反響音により洞窟全体が揺れるかのようにぶれる。


「っつぅ!耳が痛いなぁもう!」


 少し怒り気味にセリーナが言う。


 ベヒーモスの叫び声がやみ、セリーナ達に向かい襲いかかってきた。


「まあ、予想どおりね。さあ、久しぶりの戦い(殺し合い)よ」


 そう言って、ベヒーモスとの戦闘が開始された。ちなみにフェンリルは、戦闘に参加せずに今一度、主の強さを見極めるためにセリーナの戦いを静かに見つめていた。




 セリーナは空間に手を入れ、魔王城で使ったものとは違う武器を取り出した。取り出したのは大きなハルバート。その大きさはセリーナの背丈を大きく上回りその重さは明らかに通常のハルバートなんかよりもはるかに重そうである。


「さあ、やりあいましょう」


 そう言って、洞窟の天井を駆けベヒーモスの頭を狙う。


 ベヒーモスもそれに気付いていて腕を伸ばし爪での攻撃を狙ってくる。もちろんそんな大ぶりな攻撃はあたらず避ける。

 避けたセリーナは天井をけりベヒーモスの頭の角目掛けて飛び降りた。ベヒーモスも黙っておらず攻撃を仕掛けてくるが当たらず、セリーナの目の前にベヒーモスの角がある状況になる。


 大型の魔物のほとんどが大きな角を持っていて、それには多くの神経が集まっている。そのため、角をへし折ればその魔物に多大なダメージを与えられるのだ。

 しかし、そんな弱点が無防備にさらされているはずもなく、その角は異常なほど頑丈で並の冒険者ではへし折るなど到底できはしない。知識のあるものなどは別として。


 そんなベヒーモスの角は魔物の中でもトップクラスの硬さを誇る。

 セリーナはそれを分かっていながらもベヒーモスの角をへし折りに行ったのである。


 ここで重要となるのが先ほど取り出したハルバートである。このハルバートは最初から角を一撃でへし折るためにセリーナが取り出したものである。

 ハルバートは威力重視ではなく重さ重視で取り出したもので、それに加え天井からの高さで威力を増したのである。そう、単純な攻撃力だけでベヒーモスの角を折りに行ったのである。


「はあぁ!」


 振り下ろされるハルバート。それはみごとにベヒーモスの角に命中した。



 しかし、その攻撃は無慈悲にもはじき返された。少しの傷をつけただけで…。



「嘘でしょ!これを受けて傷を少し受けるだけなんて!どんだけ硬いのよ!」


 セリーナはそう言いつつ、ベヒーモスが仕掛けてくる攻撃を避ける。

 セリーナは作戦を変えるべきか避けながら考えていた。ベヒーモスは頭が悪いので攻撃事態はその凄く単純で当たることはそうそうない。その上に30メートルの巨体である。当たる可能性はほとんどないだろう。

 しかし、その反面防御面は異常なほど頑丈だ。そのため、攻撃しても刃が通らない可能性すらある。


 そんな、状況を打破しうる作戦を考えながら攻撃を避け続ける。そして、二つの方法を思いついた。


 一つはこのまま先ほど攻撃を当てた角に何度も攻撃を当て角をへし折ってしまうこと。だが、この作戦では異常なほどの時間がかかる可能性がある。

 先ほど攻撃して削れたのはわずか数センチにも満たないほど小さな傷。一度でそれなのにその数センチにも満たない傷を狙いつづけ攻撃を当て続けなければならない。しかも、いくらベヒーモスの頭が悪いとはいえ同じことをし続けていればいずれはばれる。

 つまり、セリーナにとっては簡単なのだが大きなリスクを抱えなければならないのだ。


 二つ目の手段は切り札を切ることだ。だが、これについては正直考えていない。

 目覚めたばかりセリーナの魔力量は当時に比べいくらか落ちている。そのため、切り札を満足に使えない可能性もあるし、アインスフィアという家の秘密にも触れる。まあ、幸いここにいるのはフェンリルだけなのでそのあたりは問題ないが。


 ちなみに戦闘後で思いついたのだが、大きな魔法を使えば良かったのだ。ベヒーモスは頑丈だが魔法の耐性がほとんどない。なので魔法を当てれば少なくとも簡単に勝てたとは言わないがもっと楽に倒せたはずなのである。

 閑話休題。


 まあ、そんなわけでセリーナは一つ目の案を採用しようと思ったのだが、フェンリルが念話をかけてきた。


(何を迷っているかは知らぬが、遠慮などせずに本気を出せ。ここで時間を食ってもさほど意味はない。お前が倒れたならば運んでやるし安心しろ)


 セリーナはそう言われ決心した。


(わかったよ、フェンリル。でも、ここで見たことは見なかったことにしてね)


 そう言って、セリーナは言葉を紡いだ。



「我が求めしは失われし過去。今ここにそのすべてを明かせ。全てを記せし禁断の書庫≪ロストライブラリ≫…」



 言葉が紡がれた瞬間、世界が変わった。

 まるで、世界がセリーナを中心とし回っていくような感覚である。


 セリーナの前に一冊の本が現れる。そして、さらに紡いでゆく。


「検索≪サーチ≫。どんな頑丈なものでも切り裂く無敵の刃」


 その間、ベヒーモスは動けずいた。まるで、何かに取りつかれたかの如く。


「発見≪ディスカバリー≫。能力を具現。読み取り≪ロード≫」


 セリーナが言葉を紡ぎ終わるとその手には一振りの剣が握られていた。


「悪いけど一撃で決めさせてもらうわ。魔力がほとんど残ってないからね」


 セリーナはそう言って、ベヒーモスの角目掛けて飛翔した。まさに、飛んでいた。


 そして、切り付ける。


「全てを切り裂く無慈悲なる聖剣≪デュランダル≫!」


 切りつけられた角はまるでバターを切るかの如くなめらかに切り取られた。


 そしてベヒーモスは倒れた。


「じゃあ、死んでもらうね。貴方みたいのが居るのはさすがにごめんだからね」


 セリーナはそう言い、持っている剣でベヒーモスの心臓を切った。大量の血を浴びたため来ていた服は真っ赤に染まったが。


 戦闘は終わり森に平和がもたらされたのである。


 そのあと、申し合わせたかのようにセリーナは倒れたのだった。

戦闘描写ひどいですね。もっと長くすべきでした。

次は、まともな戦闘描写を書きたいです。

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