⑤勝利の先にある絶望
「見つけたぞ! その隙間っ!」
六脚蜘蛛にとっても、また、ゴブリンライダーにとっての死角。俺は六脚蜘蛛の腹部側面から長剣を斜めに振り上げ、そのままゴブリンライダーの背中を通り抜ける様に斬り払った。
断末魔を上げる蜘蛛とゴブリン。二匹は互いに強烈な痛みに襲われ、互いに異なるリズムで撥ね合い、やがて六脚蜘蛛を御しきれなくなったゴブリンライダーが、跳ねのけられるように地面へと落下する。
「終わりだぁぁっ!」
地面に落下した小鬼が立ち上がる時間を待つ必要はない。俺はすかさず剣の持ち手を返すと、背を見せていたゴブリンに向けて飛びかかり、その中心に剣を突き立てた。
汚く叫んだ小鬼は何度か痙攣すると一瞬体を硬め、数秒後には静かになった。
「や………やったぞ」
息が切れている。本当にギリギリの状況だった。
俺がうつ伏せになっていたロロに顔を向けると、彼は震える手で親指を立てていた。
これで、上層への道が開ける。少なくとも扉の奥の休憩所にいる限り、安全は保障されるに違いない。
俺はロロの体を起こそうと疲れた体に発破をかけ、何とか一歩を踏み出した。
―――その瞬間。
休憩所の扉が吹き飛び、巨大な鉄扉が宙を舞い、激しい騒音を巻き散らすように落下した。その衝撃は空気にも伝わり、俺の体をよろめかせる。
視界を向けた先に見えたモノ。
「………嘘だろ」
その姿は忘れもしない。
逆関節の様な二本足で歩く、牛の魔獣。
「デスタウロス」
二層に現れた異形な存在が、目の前に現れた。
「何でここに………何でここで、出るんだよ」
今度はあの男の助力が得られない。こちらは既に満身創痍。いや、例え万全の状況であっても、たかが白級二人で敵う相手ではない。
猛獣の咆哮が、洞窟内で反響して響き渡る。
俺達はその衝撃だけで、身がすくむ。本能が決して抗ってはならないと全身に訴え、あらゆる筋肉を硬直させていった。




