⑥一撃
「リュウさん、あ………あれは?」
立ち上がれないロロが必死に顔を上げ、青ざめた顔で必死に声を絞る。
「………デスタウロス。どう逆立ちしても、俺達じゃぁ勝てない魔獣だ………クソったれが」
二度目の俺でさえ、手足の震えが止まらない。かつて受けた一撃を思い出すかのように鈍痛の幻覚が襲い掛かる。
魔獣がこちらを見降ろし、俺とロロを順番に一瞥した。
そして赤黒い目を細め、体の向きを僅かに変える。
その先は、俺ではない。
見ているのは、もう一方。
「っ! ロロぉぉぉ! 逃げろぉぉぉぉっ!」
出せる限りの大声で、俺は相方に危機を伝えた。
だが、ロロはうつ伏せのまま、震える腕で上半身を僅かに浮かせるので精一杯だった。
「むむむ、無理です! 体が、動きません」
負傷の上に格上の相手に睨まれ、これ以上動く事が出来ない。魔獣はそれを見抜いた上で、全力とは程遠いものの、地面が揺れる程の勢いでロロに迫っていった。
「クソがぁぁぁぁぁぁぁっ!」
側頭部に血管を浮かばせ、俺は全身に力を入れ直す。細胞一つ一つを叱咤し、殴る様にして目を覚まさせ、ついに大きな一歩を踏み出す事に成功する。
「ふんがぁぁぁぁぁっ!」
何も考えていなかった。
ロロに向かう魔獣の側面へと向かうと、左腕が折れていた事も忘れたまま剣を両手で握り、魔獣の右足目がけてバットの様に振り払った。
「ぐあぁっ!」
だが、魔獣の体毛も皮膚も経つ事が出来ず、それどころか触れ合った瞬間に痛みに襲われ、長剣が蹴り払われる。
魔獣の足が止まり、こちらを見降ろすなり目を細めて頬を緩ませていた。
「こいつ! 最初から—――」
狙いはロロではなかった。俺はその事に気付いたが、それを言葉にする前に魔獣の左拳が下から上へと弧を描くように振り上げる。
「………がっ」
拳の中心にいた俺は、そのまま岩の天井へと打ち上げられた。そして天井に前面を、地面に落下して背中を激しく打ち付け、さらに何度も回転しながら全身という全身でその威力を受け続けた。




