③一撃の代償
「リュウさん! 後ろから、同時に二匹!」
「くっ!」
振り返った矢先に、大黒蟻が左右から迫ってくる。丸みを帯びた黒い頭部が、まっすぐこちらを捉えていた。
長剣を握る力をさらに強める。
「………どっちだ」
剣を振り下ろして倒せる大黒蟻は一匹のみ。もう一方の突進は受けるしかない。
「仕方がない―――」「リュウさん! 後ろに飛んでください!」
そこへ飛ぶ、ロロの激しい声。
俺はすぐに彼へと顔を向けたが、そのまま踵で地面を蹴り、無意識に近い形で後方へと飛んだ。
「ファイアーボール!」
ロロの魔導杖から一際大きな炎の球体が放たれ、先程まで俺がいた場所を炎で埋め尽くした。
獲物との距離を変えられ、二匹の大黒蟻は速度を落とせないまま炎の中で合流し、古びた木の扉が擦れるような悲鳴を上げる。
「助かった!」
全体の把握に努めていたロロに声を掛けようとしたが、俺自身が彼の周囲を把握していなかった事に気が付く。
それは、何もかも遅かった。
「ロロ! 避け—――」「え?」
俺の声に、ロロが自分を覆った影に顔を向ける。
その瞬間、彼は巨大な六脚蜘蛛に弾かれた。
「ロロぉぉぉっ!」
片足を折り、壁に寄りかかるしか立つ方法がなかった彼は、ゴブリンライダーが操る六脚蜘蛛に弾かれ、石の地面に何度も擦られるように転がっていく。支えとしていたロロの魔導杖は、彼の手から大きく離れ、乾いた音と共に暗い影へと落下した。
「こ、この野郎っ!」
俺は持っていた長剣を咄嗟に投げつけ、ゴブリンライダーとロロの間に隙間を作る。ゴブリンライダーも、迫る俺の姿を確認した事で止めを刺す機会を逸し、六脚蜘蛛の腹部を強めに蹴って大きく後方へと飛ぶと、十分な距離を取り直した。




