①騎乗種
ここに来て、敵の数が爆発的に増えてきた。
先日は、大広間に到着するまで静かな道だったが、今は通路で一戦、大広間の到着で一戦、次の通路に向かう前に一戦と、単純に三倍の遭遇率に跳ね上がっている。
疲労も消費も素直に三倍とまではいかないが、確実に体から力が抜けていく。俺は、六匹目の大黒蟻を仕留め終えると、体液で汚れきった長剣の切っ先を次の魔物へと向けた。
「何だ何だ! ここにきて、忙しくなったぞ!」
「………恐らくこれが、この層の本来の姿なのでしょう」
ロロも、この戦いで三度目となる炎を杖から吐き出し、俺の背後に回ろうとしていた六脚蜘蛛を焼き討つ。
これで終わり。頭の中では理解しつつも、俺達は周囲を何度も確認してから、持っていた武器をようやく降ろした。
「すぐに移動だ。もう素材を剥ぐ時間すら惜しい」
休憩もどこかで取りたいが、通路が複数ある広間である以上、長居は出来ない。
「ぼ、僕もそう思います。次の広間に期待しましょう」
ロロも肯定的な意見を口にするが、一向に休める場所が見えてこない。彼自身も分かっているのだろうが、気持ちを下げないよう、前向きな発言を続けるしかなかった。
俺は腰のポシェットから薄いメモ帳を取り出すと、細い炭の棒で広間の位置と通路の本数、そしてその方角を簡易的に記録し、方角からまだ探索していない領域に指を向ける。
誰かが通った道かどうかを見定める余裕はない。
俺達は既に通った道や広間に繋がりそうな方角を避け、前へと進み続けた。
そして、本日十回目の広間へと到着する。
「リュウさん! あれを!」
ロロが指さす方向には、初めて見る金属製の大扉があった。
「あったぞ! 上層への入口だ!」
扉の向こうには、上層へと繋がる階段と魔物がいない休憩所が広がっている。間違いない。体力と魔力が残っている中、ようやく目的の地へと辿り着く事ができた。
だが、広間の魔物もこちらの孫愛に気付き、一斉に振り返る。
ロロが視線を横一線に流す。
「大黒蟻が三匹、六脚蜘蛛が一匹、天井には黒蝙蝠が二匹………それと、ゴブリンライダーが一匹です」
「くそっ! 相も変わらず数も多いが、ここにきて、騎乗種かよ………冗談じゃねぇぞ」
魔物に跨り自在に操る存在。冒険者達は奴等をまとめて騎乗種と呼ぶ。従えている魔物本来の能力に加え、乗り手の知恵と技が追加された厄介な敵である。薄緑の汚れた皮膚と、局部を隠す程度の薄い防具を纏う小鬼族は、今まで見てきた魔物よりも一際大きな六脚蜘蛛の頭胸部に跨り、残りの魔物達に向かって左右に展開するように理解できない音を発していた。




