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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
—理の外で生きる者達―
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①かつての自分

「御主人様」

 メイド服の女性は、前を淡々と歩く主人に声を掛ける。

「どうした、コルティ」

 足を止め、青年が振り返る。

 暗い道、最低限の照明と岩に囲まれた迷宮の果て。青年は、下層に似つかわしくない革の鎧と市販の片手剣を纏い、その姿は初級冒険者と見間違われても仕方がない。


「何故、あの男を迎えたのですか?」

「あの男?」

「リュウとかいう、失礼極まる無作法者の事です」

 特段強くもなく、それどころか感情的、短絡的に行動する自分勝手な少年。普段は冷静で温和なコルティが、彼を辛辣に表現する。

「あの者は、御主人様の傍にいるべき人間ではありません」

 まだ数回も顔を合わせていないにも関わらず、彼も随分嫌われたものだと青年が鼻で笑った。


「コルティ。もう()()()長い付き合いなのに、何故かと俺に聞くのか?」

「長い長い付き合いだからこそです」

 気が付けば困った顔で苦笑しているコルティが、仕方がないと母性豊かに流し始めた。

「これが初めてではありませんが、あまり良い趣味とはいえません」

「だが………懐かしいだろう?」

 両手を軽く開くと、青年は天井の先を見通すように眺め、頬を緩める。


「あいつは、昔の俺さ」

 一度呼吸を挟む。

「何も分からず、目の前の大切な存在しか意識できない程に視野が狭い。手元にある情報で全てを悟ったかのように振る舞い、挙句の果て感情的に相手へと噛みつく」

 その度に周囲に諭され、何度も失敗してきた。青年は、自分の過去と例の少年とを重ねていた。

「気が付けば、今の俺には出来なくなった、忘れてしまった純粋な姿だ」

 他人が見れば粗暴な言動でも、時にそれが羨ましくなると青年が語る。

「御主人様は、昔から何も変わっていません。今もこうして、多くの為に身を粉にし、振る舞っておられます」

「それしか取り柄がなかったからな」

 青年が自嘲する。


 そして、腰の片手剣の上を這うように手を伸ばした。

 だが、彼が剣を抜くより速く、青年の左右で風が舞い、二本の巨大な三日月斧(バルディッシュ)が奥へと通り過ぎていく。

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