⑫絶望の中に生まれる一筋の道
翌朝、のような感覚。
俺は最後の番を務め終え、消えかかっていた薪の最期を見届ける。
思った以上に薪を消費してしまった。どんなに節約しても、もう一晩を過ごせるだけの分はない。今日一日歩いて、上層へと続く休憩所に辿り着かなければ、飢える前に寒さで体調を崩しかねない。
俺は背嚢の中を再確認し、外に出していた荷物を一つ一つ元の位置へと戻していく。
幸い、魔物の気配はなかった。
「もっと、容赦なく魔物が湧いてくるものばかりだと思っていたが………いや、単に運がいいだけか」
事実は事実として受け止めるが、過剰に期待するべきではない。
俺は、自分に言葉を心へ押し込めた。
荷物を丁度片付けると、ロロが目を覚ました。
「起きたか?」
「………おはようございます。リュウさん。魔物は―――」
「何もなかった………お前はどう思う? ほら」
干し肉を受け取ったロロの思考が即座に回り出す。
「有難うございます………そうですね、おかしいと思います」
そして俺と同じ結論に至る。
「ここが何層か分かりませんが、下層に降りる程、冒険者の数は減り、魔物の討伐数は当然減っていきます。魔物の数が減らない以上、遭遇する確率は高まるはずです」
その通り。
これは、洞窟に潜る冒険者ならば、誰もが知る事である。
「ここから先は、根拠のない僕の想像ですが」
噛み切れない干し肉を何度も奥歯で潰しながら、ロロは唯一の入口を睨みながら言葉を続ける。
「僕達が落ちた直前まで、誰かがここで戦っていた可能性があります」
「だが、今まで魔物の死体は見てこなかった」
俺の意見に彼も頷くが、それに答えられるだけの情報は、彼ももっていなかった。
だが、この状況を説明できる可能性としては一番ありそうな理由でもある。
俺は持っていた干し肉を一気に平らげ、水で押し込んだ。
「つまり、今ならば上層を目指しやすい条件だという事だ」
「良いのですか? あくまで僕の勘でしかないんですよ」
「無いよりマシだろ? 今の俺達には」
今の俺達に、情報を集めて考えるだけの時間も余裕もない。白級二人が下層で一晩を過ごせただけでも、既に奇跡の産物と化している。
「はぁ。時々、リュウさんの勢いが羨ましくなります」
「それは、馬鹿にしているのか?」
背嚢を背負いながら眉を潜め、ロロへとわざとらしく振り返った。
「ととと、とんでもない。褒めたつもりですよ」
痛みに耐えながら立ち上がるロロだが、自然と笑っていた。
楽しい。
こんな状況にもかかわらず、俺もまた彼の笑顔に釣られるように頬を緩ませている。
「さぁ、今日中に階段に辿り着こう。そして、救助に来た奴らを驚かせてやろうぜ」
「そうですね。面白そうです」
ロロの腕を取り、再び俺達は道を歩き始めた。




