⑪ロロの過去
「僕の家は、商家の五人兄弟。僕は長男でした」
商人の長男。それも店持ちならば、重要な後継ぎのはず。そんな貴重な人物を、冒険者などという危険な場所に行かせる事を、親が許すはずがない。
ですが、とロロは視線を落としていく。
「御存じの通り、僕は人見知りが激しく、商売でも大勢の前に立つ事が出来ませんでした。一方、弟の次男は頭も良く、誰とでも仲良くなれる才をもっていました」
後継ぎが次男と決まるのに、そう長い時間はかからなかった。
「僕は、家を追い出されました」
長男が次男が継いだ店に居続ける事が恥だと思っていた彼の両親は、長男が後を継げなかった理由をつくる為、ロロを冒険者として送り出したのである。
自然に死ぬ可能性が最も高い職業、長男が死ねば、自然と次男が店を継ぐ事が出来る。
「………親から早く死んでこいって言われたのと同じじゃねぇか」
不愉快極まる話だ。
俺は干し肉を口の奥へと入れて噛みきり、それ以上言葉に感情を乗せないよう、何度も噛みしめた。
それでもロロは、両親が魔法を教えられる人物に預けた事だけは感謝していると口にする。それが皮肉なのか、本当に感謝しているのか分からない。
「その人が、前に言っていたお前の師か」
「はい。巡礼の旅をしている神官様でした」
何かを思い出したのか、ロロの顔が上がり、くすりと笑い出す。
「厳しくて気難しい人で、感情をあまり出さない人でしたが………とても優しい人でした」
巡礼の目的もあり、師事してもらった時間は街に滞在していた僅か一か月足らずだったが、それでもいくつかの魔法と生きる為の術を教わったという。
「さぁ、僕は話しました。今度はリュウさんの話を聞かせてください」
「お前、本当に人見知りか? とはいえ、お前の話を聞かされた後だとなぁ」
自分勝手に家を飛び出した身として、彼以上に語れる話が出てこない。
「………話せる範囲だけだぞ」
「構いません。お願いします」
結局、その日は休憩の半分を他愛もない雑談で終えてしまった。




