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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第九章 初級冒険者、生き残る
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⑨半歩ずつの勝利

「よし! 残すは蜘蛛野郎だけだ!」

 俺は弧を描くように走り込み、六脚蜘蛛の側面へと飛びかかる。

 蜘蛛は正面のロロか、側面の俺か、どちらを優先するか。

「こっちを向いたぞ! ロロ!」

「はい! ファイアランス!」

 どちらを向いても、六脚蜘蛛の命運は尽きていた。俺は六脚蜘蛛の間合いの手前で急停止すると、すぐに後方へと飛び退き、ロロが放った炎の巻き添えを回避する。

 彼が放った炎の槍は六脚蜘蛛の大きな腹部へと深々と突き刺さった。中の糸に引火したのか、蜘蛛は腹部から炎を吹き出し、節々の隙間からも激しく炎を巻き散らした。

「へっ、一丁上がり!」

 残るは糸に絡められた大黒蟻のみ。一匹一匹の頭を剣先で確実に潰して回り、ものの数分で広間の魔物を一掃する。


「良い連携だったな」

 全ての魔物を倒し終わった俺は、壁に寄りかかったままのロロに水筒を手渡した。

「あ、ありがとうございます。ですが、基本的にリュウさんが上手く立ち回ってくれたお陰です。それにしても、あれだけ動いているのに、まだ疲れないんですか?」

 素直に褒められる事が多くなかっただけに、体が少しむず痒くなる。だが、体力の話になると、やや困惑せざるを得ない。

 腹は立つが腕も立つ冒険解説職(チュートリアラ―)の訓練によって得た体力(それ)は、この階層でも十分通用していた。流石に汗が頬を伝って落ちる程度には消耗してきたが、しばらく休めば呼吸が落ち着いてくる。

 空腹と水分、そして睡眠にさえ気を付けていれば、まだまだ戦える状態だった。


「俺よりも自分の方を心配したらどうだ? 肝心の魔力はまだ大丈夫なのか?」

 体力があっても攻撃力がなければ意味がない。この場を生きて帰る為には、ロロの魔力が何よりも重要だと俺は考えている。

「えぇ。お陰様で魔法も最小限の数で済んでます。それに休憩と移動を繰り返しているので、思った以上に消耗は大きくありません」

 虎の子の魔力回復薬(マナポーション)も使わずに残っていると、彼はポシェットに手を乗せた。

 魔法使いは、いざという時の為に魔力回復薬(マナポーション)を持ち歩く事が一般的だが、この薬一つ買う為に、一週間分の稼ぎが必要になる。簡単に使う訳にはいかないが、渋れば命を落とす原因にもなりかねない。

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