⑥直線状の二人
「確かに基本中の基本ですが、今回に限っては、ここにいた方が危険なんです」
「………どういう事だよ」
明確に言い切るロロの主張に、一応と耳を傾けてみる。
彼は、救助までの時間が不明である事。仮にシランド達が急いで街に戻ってギルドに報告、後に救援を最短で集めたとしても丸一日はかかる事。準備も考えれば二日以上はかかる事を順番に挙げた。
「さらに、水場がある事は僕達にとっても助かりますが、それはここに住む魔物達にとっても同じ意味をもちます」
「………ここにいれば、魔物に遭遇する可能性が一層高くなるという事か」
それは一理ある。
ロロが頷きながら続ける。
「幸い、僕達は水筒に水を入れて持ち運べます。無駄遣いさえしなければ、魔物と戦い続けながらここの水源を常に確保し続ける理由がありません。それに、各層の入口には休憩所が設けられています。そこで待機しておいた方が安全ですし、救助以外の冒険者であっても、必ずその部屋を通ります」
救助に来る冒険者も、この高さを降りる事は出来ず、やはり各層を降りて捜索する事になる。何層に落ちたか不明な以上、下手な場所に留まる方が危険だと彼が主張した。
「あぁ、くそ。言いたい事は分かった」
悔しいが、彼の提案を否定するだけの言葉が見当たらない。最初は俺の意見に反対してきたという不愉快な感情が先立ったが、聞けば聞く程、腕の痛みと重なって負の感情の指向性が散らされていく。
「………少なくとも、ロロの意見を否定するだけの考えが俺にはない。ここは、魔法使いの賢さに賭けてみるとしよう」
諦めに近い言葉に、むしろロロの方が驚いて頭を下げた。
「す、すいません。歩けない上に、今日知り合ったばかりの僕が生意気に言ってしまいました」
容姿等々から、これまで自分の主張が良い印象として受け入れられた事がなかったと、彼が目を閉じる。
「気にするな。俺は逆に、感情的になって周囲から疎まれていたらしいからな。方向性は違うが、ある意味では似た者同士だ」
卑屈になり過ぎる奴は嫌いだが、こちらも人の事が言えた立場ではないと、あの男に好き放題吐かれてきた身である。互いの性分は真逆だが、人付き合いの下手者同士だと、二人で乾いた笑いで流す事にした。




