①突入
砦は左右正面の三棟から成り立っていた。俺達は砦の中庭へと入ると、既に扉が蹴破られていた左の建物へと突入した。
「………誰もいませんね」と、ロロ。
正確には、盗賊達の死体が数体転がっている。だが、戦うべき敵も救うべき冒険者の姿もない。
「流石に先輩達も、こんな所じゃ負けないって事か」
フォースィから、砦に突入した冒険者の多くが銀等級である事を聞かされている。全員がそうでないにしても、多くの冒険者達がアルゼットに匹敵すると考えれば、盗賊程度が無事に生きて帰れる訳がない。
「………っ? 階段を上がってくる音が聞こえますね」
アイリーンが耳に手を当て、俺達もそれに倣う。
確かに、部屋の奥にある地下からゆっくりと石をぺたりぺたりと、水音の様な音が聞こえてくる。
同業者か、それとも。
「裸足の音です。リュウさん、冒険者ではありません」
「………その通りだ」
俺は腰の長剣を抜いた。
石壁に手を当て、部屋へと上がってきたのは一人の若い女性だった。色褪せた革の胸当てを纏い、右手には既に抜かれた短剣が握られている。
彼女もこちらの存在に気付き、すぐに睨みつけてきた。
「く、くそっ! こんな所で!」
「盗賊にしちゃぁ………随分と」
外見だけで判断すべきではないが、首には冒険者証もなく、こちらを見て驚いた事からも味方ではない。かといって盗賊にしては体は貧弱、靴もなく、装備がお粗末すぎる。
階段からは彼女だけでなく、五人の若い男女が続々と現れた。
「リュウさん………この人達は、奴隷です」
「奴隷? だが―――」
ロロの言葉に驚かせたが、奴隷にあるべき手足の枷や鎖がない。だが、アイリーンも一歩前に出ると魔導杖を前へと向けて構えた。
「覚えてない? あれはアリアスの村から運んできた人達よ」
その言葉に、記憶の引き出しが一気に開かれる。
彼女は、俺達が運んでいた奴隷の中にいた犯罪者達だった。




