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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第十章 冒険者、魔王軍を名乗る戦士と戦う
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②奴隷の意思

「くそっ! 何でこんな所にいるんだ!」

「知りませんよ! 知っていたらわ話題にしてます!」

 アイリーンが叫び返す。それはそうだ。その答えは彼女達にしか分からない。


「お前達!」

 俺は咄嗟に大声を上げた。

「盗賊達に捕まっていたのか!? なら、この砦はもうすぐ解放される! 武器を捨ててこっちに来るんだ!」

 盗賊達と戦えない事は残念だが、捕まった人々を連れて行く事は出来ない。俺は彼女達を砦の外へと運び出す手順を、大雑把ながらも頭の中で描き始める。

「冗談じゃないわ!」

 元奴隷の女性は、真正面から声を張り返した。

 どういう意味か。俺の思考が一時中断される。

「こっちはようやく自由になったのよ! また奴隷(あそこ)に戻るなんてまっぴら御免だわ!」

 そうだそうだと、他の男女も各々の武器を掲げながら援護する。

「馬鹿野郎! 奴隷の身分のまま外に出ても、どうしょうもないんだぞ!」

 主人のいない奴隷は、即逃走奴隷として犯罪者扱いされる。真っ当な職に就けるはずもなく、どんな経路で奴隷になったかも分からない者を受け入れる者もいない。それこそ、犯罪を家業にするしか生きる道はない。

「そんな事、やって見ないと分からないさ! さぁ、皆行くよ!」

 女性の扇動に、元奴隷達が一斉に蜂起した。


 俺の中で戦うか避けるかの二択が揺れ動く。

「リュウさん! 武器を持っている以上、戦うしかありません!」

「………クソったれがっ!」

 それしかない。俺はロロの背中に押され、長剣を前に構えた。

 よく見れば、他の者達もアリアスから一緒に運んできた奴隷達である。名前こそ知らないが、知った顔の人間と剣を交わさなければならない苦しさが、俺の胸を大きく軋ませてくる。

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