⑤人の理を超えている者
「ま、こいつらが偽物なのと、うちの関係者じゃないって分かったからな。なら、実力も推して知るべし、だ」
「へ、何を知ったかのように………人間如きが魔王軍の恐ろしさを知らない癖によぉ」
「ん?………あぁ、いやいや知っているさ。誰よりもな」
青年がコルティに三日月斧を降ろすようにと手をゆっくりと払い、改めて前に立つ。
「魔王軍の上層部は自分を幹部だと呼ばない。幹部とやらの人数もまるで合っていない。そもそも幹部を名乗る癖に俺やコルティを知らない時点で、モグリ確定さ」
片手剣の柄を握る。
「テメェ、好き勝手ぬかしやがって! もういい、ぶっ殺してやる!」
ガーヴィが種族特有の脚力で一気に青年へと肉薄する。確かに、その速度は侮れない。
だが、青年まで腕一本の距離で彼の全身は黒く透明な障壁と衝突した。
「ぐっ! な、何じゃこりゃぁ!?」
「闇のアイギス………こいつを知らない時点で、お前は故郷の出でもない。全くの無関係か、それとも追放者の子どもか孫か………まぁ、どうでもいいがな」
青年は障壁を解除すると右足を真上に高く蹴り上げ、自分の両足を一本の木の様に伸ばし、ガーヴィの下顎を打ち上げる。
「ぐっ」
「それじゃぁ、サヨナラだ」
彼の足が地面から浮く。そして着地する前に、青年は先に足を地面へと戻し、上半身を屈めた。
「魔人抜刀流―――」
上半身を捻り、鞘に納めていた剣を一気に抜き放つ。
瞬間。
ガーヴィの左腕と両足が同時に切断され、コンマ数秒遅れて彼は頭上から地面に抜けていく巨大な雷撃の柱を全身に受けた。
「ぐぎゃおぉぉぉぉああぁぁぁぁっ!」
「―――三雷」
一瞬の内に雷を纏った三撃を放つ剣術。その速さは、雷撃が後から襲い掛かるように見える人外の技。青年は残滓のまま動きを止めていた剣を一度横に払い、流れる様に鞘へと納めた。




