⑲生存率を上げる為に
彼女からの条件はその二つだけだった。
フォースィは俺達に持っていく荷物を自分用の薬品と水、貴重品のみに絞らせ、残りは扉の前に放置する事を指示する。
「まだ建物の中には敵が潜んでいるわ。少しでも生存率を上げる為にも、荷物は極力軽くしなさい。扉の前に残りの支給品を置いていけば、気付いた他の冒険者達が勝手に使うでしょう。それと、自分達が帰ってきた際の分は、目印になる木の根元か土の中に隠しておきなさい」
「な、成程」
どれも初めて聞くが、どちらも納得がいく。優先すべきは自分と仲間の安全。それに徹する。さらに帰還した際の保険もかけておけと、熟練者の金言が俺達の中に響く。
ならばと、俺も思いつく限りの行動を取る。
「ロロとアイリーンは、置いていく分の薬と食料を全て俺の鞄に。悪いが、俺が持って行く分は二人で分担して持ってくれ………それと、帰還用の荷持は持って来た空袋に全員分詰めて、大木の下に埋めよう」
扉の正面にある森の中の大木。忘れないよう、根元に短剣で傷を付けておけば問題ない。必要となれば必ず思いだすし、忘れているのならば、それはそれで大した怪我ではない事になる。
「分かりました」
ロロが俺の分の荷物を自分の背嚢に入れ始める。
フォースィは何も口を挟んでこない。少なくとも悪手ではない、俺は相談した。
俺は二人から受け取った余りの医薬品や食料を詰め、崩れた扉の近くに放置する。これで俺は背負うべき荷物がなくなり、三人の中で最も軽快に動く事が出来る。荷物持ちになるロロとアイリーンには申し訳ないが、遠距離攻撃故に多少の重量には耐えてもらうしかない。
「その代わり、きちんと守ってくださいね」
「分かってるさ」
先程の件を根に持っているのか、それとも軽口で場を和ませようとしたのか、アイリーンが口を尖らせてから苦笑で締める。
数分で荷物の整理を終えると、俺達はフォースィに報告した。
「それじゃぁ、覚悟はいいかしら?」
森の切れ目にフォースィが先頭に立ち、周囲を確認した上で振り返る。
俺達は無言で頷いた。




