⑱弱さを認める事
「俺は強くなりたい。その為にも、経験出来る事はここで一つでも多く積んでおきたい」
洞窟で遭難した時、遥か格上とはいえ魔獣相手に手も足も出なかった。昇級試験では、同格のリーダー相手を説得しきれず、荷物に損失を与えたばかりか、首領らしき猪亜人を倒す事も出来なかった。加護の魅力に囚われ、英雄気取りで周囲を無視した行動をとった事など、つい先程の事だ。
ここぞという時、俺はまだ自分の力でまともに勝った事がない。
昇級を果たし、この先はさらに危険の大きな依頼を受けられる。そうなれば、自分だけでなく仲間を守るだけの力が今まで以上に求められる、そして幼馴染を奴隷から解放し、守れるだけの質も問われる。
俺は今の弱い自分が許せなかった。
「いつか似たような状況に直面するなら、仲間の多い今の方が多く学べるし、安全のはずだ」
冒険者である以上、いつか人間とも命を奪い合う事もある。今回の様に拠点を対象とした依頼を受ける事もあるかもしれない。いや、遅かれ早かれ必ずくる。その時に、『初めてだから分からない』では済まされない。
「………分かったわ。なら、行ってみましょうか」
「師匠!?」「フォースィ様!?」
安全策を取るとばかり考えていたロロとアイリーンが、リーダーの決断に驚く。
だが彼女は人差し指を立て、条件を提示する。
「悪いけど、先の加護は付与しないわ。さっきみたいな馬鹿になられても困るからね………まぁ、回復と、そうね、助言くらいは、後ろで偉そうにしてあげるわ」
「構わない。俺としても頼り過ぎず、今の実力で色々と学びたいからな」
元々断るつもりだった。むしろ助言と回復が約束出来ただけでも儲けものである。
「あと、私が撤退すると言ったら素直に従う事」
「………分かった」
リーダは彼女だ。俺は当然であると小さく頷く。




