⑯遥か先に対する畏怖
「あれがファイアーボールだって? 確かあれは一番下の魔法だろう。いくら木材といっても、鉄枠の扉を周囲の壁や櫓ごと吹き飛ばす威力なんて聞いた事がないぞ」
魔法に疎い俺でも、それ位は分かる。
だが、ロロは首を横に振った。
「基本的に魔法はその使い手が注ぐ魔力量に左右されます。ですから下級とはいえ、あの威力になる事は理論上は有り得ます」
それに、と続く。
「先程の魔法には、複数の球体が存在していたように見えました………三、いえ四個ほどでしょうか」
「あら、よく見てたわね………正確には五個よ」
頬を吊り上げ、フォースィが正解だと言葉を挟む。
「五個!? 五発同時に魔法を発動させたのですか!?」
彼が魔導杖を持つ手を震わせている。
ロロが驚く意味に俺の知識が至っていない。俺はアイリーンにそっと視線を送った。
それに気付いた彼女も、やや引き気味に口を開く。
「魔法の同時発動は、かなりの高等技術です。確かに、異なる魔法よりも、同じ魔法の方が比較的発動させやすいとは聞きますが、それでも五発同時というのは………正直聞いた事がありません。かと言って、五人で同じ魔法を発動させたかと考えても、魔法が綺麗にまとまり過ぎていました」
結論として先の魔法は、一人で放ったという意見に落ち着くが、彼女の知識としても規格外という評価のようだ。
「上には上がいるって事よ」
「な、成程」
答えが出ない疑問にフォースィが抽象的な答えを提示し、俺もそれに納得する形で会話を終える事にした。最早それしかない。




