⑭加護酔い
ようやく息を整えかけた所に、俺達の体が淡い緑で包まれた。
「こ、こいつぁ」
「凄い。傷が癒えていく」
アイリーンの肩にあった矢傷だけでなく、全員の疲労までもが剥がれていく。
「まずは無事の生還、おめでとう」
フォースィが魔導杖を降ろす。
「一人、加護酔いしたお馬鹿さんがいたみたいだけど………まぁ、皆の食事を奢ってくれるそうだから、良しとしましょう」
「くっ」
彼女の視線が座ったままの俺に落ちていく。どうやら、あの時の感情的な思考の狭窄のような状態を『加護酔い』というらしい。
「………自分だけ安全な所にいたリーダーも、大概だと思うけどな」
自分が陥った状況は受け止めなければならない。だが、大先輩とはいえ、一人だけ前線に飛び出さなかった彼女の行動にケチをつけておきたい衝動を押さえられなかった。
「りゅ、リュウさん………師匠は、ずっと僕の支援をしていてくれたんですよ」
「貴方を連れ戻せという指示も、フォースィ様からなのよ?」
「………」
全く気付かなかった。
「まだ、加護酔いが続いているのかしら?」
「………いや」
本当に自分が嫌になる。自分でも大分マシになったと思っていたが、感情的になるとろくでもない。
俺は大きく息を吸い直し、顔を強く押さえながらゆっくりと息を吐くと静かに立ち上がった。
「大丈夫だ。その………何だ、食って掛かって悪かった」
小さく頭を下げる。
久々に自己嫌悪の連続が胸と頭を締め付ける。俺は拳の角で額を強く擦り付け、開いた指で目頭を強く押さえつけた。
思った事を言葉として簡単に出してはいけない。頭で分かっている事を何度も心の中で繰り返し、俺は自分の感情を必死に抑え込む。




