⑫勇敢と蛮勇
「っ!?」
「リュウさん! 流石に無理があります! ここは言われた通りに距離を保ちながら攻撃を誘いましょう!」
ロロの言葉が胸に突き刺さる。
だが、俺の高揚した意思が反論を口にさせる。
「いや、この力で繰り返せば、いつかは―――」「無理だって言われているのが聞こえませんかっ!? さっさと戻りますよ!」
いきなり鎧の襟首を掴まれ、引き倒された。
「アイリーン!? てめぇ、何しやがる!」
戦いの最中、味方を引き倒す奴がいるか。俺は空を見上げるような形で彼女の顔を睨み付ける。
だが同時に、俺の頬に一滴の液体が零れた。
自分の顔に落ちたものを不快に思い、それを手の甲で拭いさる。そして、視界に入った手の甲の色に気付き、俺は言葉を失う。
慌てて視界を泳がせると、アイリーンの左肩に一本の矢が刺さっていた。
咳き込み、息を切らしながらも彼女は杖で追撃してくる矢を打ち払い、詠唱を途切れ途切れの単語を繋いで進めていくと自分自身で障壁魔法を展開させる。
「おまっ、その傷!?」
「もう障壁の回数を超えたの! 誰かと違って、私は矢を全部落とせませんからっ!」
魔法使いに、戦士並みの動体視力と技術がある訳がない。冒険者としての常識に、俺は今更ながらに思い出す。
「………分かった」
俺は立ち上がると彼女の前に立ち、彼女のに代わって迫る矢を斬り払う。
「正気に戻ってもらって、助かります」
歯を食いしばって肩の矢を抜き捨て、自分で回復魔法を唱えながらアイリーンは鼻をすすった。
扉を突破する事は俺達の仕事ではない。加護の力に興奮し、自分ならやれると突撃した結果がこれである。本来ならば、ロロやアイリーンの近くに立って、二人からの攻撃を自分に向けさせ、率先して守らなければならなかった。
「済まなかった………下がれるか?」
「大丈夫。一応確認しますが、任せていいんですね?」
表情が大分和らいだアイリーンに、俺は背中を向けたまま小さく頷いてみせる。




