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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第九章 冒険者、砦と相対する
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⑪矢雨の中へ

「行くぞっ!」

「「はい!」」

 俺達は、一蹴りで森を大きく飛び出した。

 目指すは砦の入口、鉄枠で補強された木製の大扉である。

 出た瞬間に、俺達の姿は丸見えとなった。扉の上の通路と櫓から、盗賊達が一斉に騒ぎ出し、こちらへと弓と矢を向け始める。

 そして放たれる矢の雨。


 その先端を、俺の目は確かに捉える。

「見える、見えるぞ!」

 矢の一点。その左右の腹が見せる僅かな光沢の違いまで、そしてその本数を数えられる程に、俺の目は確実に見極めていた。

 本来ならば一瞬の出来事なのだろうが、意識するだけで世の中の時間が遅くなり、俺の体だけがいつものように動けていた。

「障壁に頼るまでもない!」

 首を曲げ、頬をなぞる様に通過する矢を見送る。俺は右手で握った長剣(ロングソード)で、近くで群れていた矢を一斉に払い落とし、最後に迫って来た矢を、左の籠手で振り払った。


「燃え盛り、貫け、炎の槍よ! ファイアランス!」

「貫き穿て、光の道よ! ホーリ-ライト!」

 ロロとアイリーンの魔導杖から放たれた二色の魔法が直進し、大扉上部にある櫓の屋根を破壊する。詠唱を含めた魔法は通常よりも威力を増し、さらにフォースィの能力向上の魔法も重なる。左右の櫓は一撃で崩れ去り、落下した板と藁の屋根が弓を構えていた盗賊達を巻き込み、攻撃の濃度を低下させる事に成功した。


「今だ! 狙い時ぃぃぃっ!」

 俺は弱まった矢の雨の中を走り抜け、扉の正面へと食らいついた。

「うおおぉぉぉぉ!」

 昂った感情で大声を上げながら、助走で得た威力が消える前に長剣(ロングソード)を振り下ろす。

 だが、剣先から三割分のみが扉の木材へと侵入するだけで、枠組みとなる鉄の切断には至らず止められた。

 自分が想像していた扉の粉砕までには、遠く及ばなかったのだ。

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