⑪矢雨の中へ
「行くぞっ!」
「「はい!」」
俺達は、一蹴りで森を大きく飛び出した。
目指すは砦の入口、鉄枠で補強された木製の大扉である。
出た瞬間に、俺達の姿は丸見えとなった。扉の上の通路と櫓から、盗賊達が一斉に騒ぎ出し、こちらへと弓と矢を向け始める。
そして放たれる矢の雨。
その先端を、俺の目は確かに捉える。
「見える、見えるぞ!」
矢の一点。その左右の腹が見せる僅かな光沢の違いまで、そしてその本数を数えられる程に、俺の目は確実に見極めていた。
本来ならば一瞬の出来事なのだろうが、意識するだけで世の中の時間が遅くなり、俺の体だけがいつものように動けていた。
「障壁に頼るまでもない!」
首を曲げ、頬をなぞる様に通過する矢を見送る。俺は右手で握った長剣で、近くで群れていた矢を一斉に払い落とし、最後に迫って来た矢を、左の籠手で振り払った。
「燃え盛り、貫け、炎の槍よ! ファイアランス!」
「貫き穿て、光の道よ! ホーリ-ライト!」
ロロとアイリーンの魔導杖から放たれた二色の魔法が直進し、大扉上部にある櫓の屋根を破壊する。詠唱を含めた魔法は通常よりも威力を増し、さらにフォースィの能力向上の魔法も重なる。左右の櫓は一撃で崩れ去り、落下した板と藁の屋根が弓を構えていた盗賊達を巻き込み、攻撃の濃度を低下させる事に成功した。
「今だ! 狙い時ぃぃぃっ!」
俺は弱まった矢の雨の中を走り抜け、扉の正面へと食らいついた。
「うおおぉぉぉぉ!」
昂った感情で大声を上げながら、助走で得た威力が消える前に長剣を振り下ろす。
だが、剣先から三割分のみが扉の木材へと侵入するだけで、枠組みとなる鉄の切断には至らず止められた。
自分が想像していた扉の粉砕までには、遠く及ばなかったのだ。




