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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第九章 冒険者、砦と相対する
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③洗礼開始

「うぅ。す、すいません。戻りました」

 口元を袖で拭いながら、ロロが復帰して来る。

「だ、大丈夫か?」

「だだだ、大丈夫です」

 顔も唇も白い。痩せ我慢にすらなっていない。

 そういう俺も、それ程余裕は残っていない。

 

 フォースィが、俺達のやり取りを見て、何度目かの溜息をつく。

「これから人間相手に剣と魔法を振るのだから、早く慣れる事ね」

「はい………頑張ります、師匠」

 起伏のない言葉に、ロロが面目ないと小さく頷く。

 俺はぴしゃりと両頬を叩いて、気合を入れ直す。

「アイリーン! ほら行くぞ!」

 残ったのは彼女のみ。

「うぅ! 分かりました! 今行きます!」

 行けばいいのだろうと、大きな踏み足で大木から姿を現したアイリーン。

 だが、その十数秒後。

 すぐに大木の影へと戻り返り、ロロと同じ末路を歩む彼女の背中を見る事になった。

「早くしてくれ………俺も、そんなに保たないから」

 二人が撒いた据えた匂いが、俺の喉元を酷く刺激する。何度も胸を撫でたい所だが、革鎧の上からだと効果が薄い。と、いうか全く無い。

 二人と同じ運命を自分が辿る前に、俺も早々にここを立ち去りたかった。


「正直、きついぞ………なぁ、どうすれば慣れるんだ?」

 駄目で元々。俺は熟練者(ベテラン)フォースィ(リーダー)に視線を送る。

 それに気付いた彼女は、仕方がないと眉を潜めた。

「馬鹿ね。鼻から空気を入れるから匂いを感じるのよ。口で呼吸しなさい。それも………思いきり大きくね」

「「な、成程!」」

 俺とロロが、そんな簡単な事で良いのかと掌にぽんと拳を落とし、早速口を大きく開けた。

 そして大きく一呼吸。

「「うぅおっ! むぐぅっ!」」

 口を閉じていた事で、胃の中の逆流を押さえていた力が弱まる。その事に気付いた俺とロロは、すぐに口を閉じ直したが、代わりに鼻で吸った空気が決定打となり、胃の中のものが喉を通り、口の中を占領していった。

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