①迫る現実
森の中に続く街道に入って三十分。さらに同じ時間を、森の中で草木を分けながら進むと、俺達はそこで異様な光景を目にする。
「これは………」
口の中で滑るような鉄の味を感じさせる独特の匂いと、吐き気をもよおす生臭さが混ざった空気から、ある程度を予想していたが、やはりと目を細めるしかなかった。
森の一部が、本来の色ではない赤で染まっている。
木の幹や草葉の上に赤と白の肉片が散乱し、体が大小切断された死体が複数転がっていた。
「冒険者の………ではないですね。うぅっ!」
光景と匂いの酷さに、ロロがずっと鼻を袖で押さえていたが、ついに限界を迎える。彼は青冷めた顔で後方へと走っていき、大きな木の下で胃の中のものを全て吐き出した。
別に弱いとは思わない。人間や同じ体の構造をもつ亜人の切断面を見て、何も思わない方が異常である。俺も強く意識し続けなければ、据えた液体がいつ喉元に込み上げても不思議ではない。
ちなみにアイリーンは別の大木の陰に隠れており、見ない事で自分を守っている。
「冒険者の死体がないって事は、一方的に勝ったって事で良いのか?」
唯一、無表情でいられる冒険者。我らがリーダーのフォースィに顔を向けた。
彼女の表情は、森の中に入る前と何一つ変わっていない。
「そうね。冒険者達もそれなりの人数で行動しているし、銀等級以上ともなれば、単独でこの程度は出来るでしょうね」
「………マジか」
「えぇ。マジよ」
俺は惨状に再び目を向ける。
肉片を数える気には毛頭なれないが、少なくとも二つに分かれているだけで済んでいる組み合わせから、五人以上の盗賊がこの場にいた事になる。それを単独で排除出来る実力。改めて、冒険者等級の違いを思い知らされる。




