⑫気が付けば最後尾
アイリーンが小さな革鞄に詰めた薬品をフォースィに見せる。
「一応、フォースィさんにも—――」「私の分は要らないわ。三人で分けて頂戴」
黄金級の冒険者にどこまで気を遣うべきか。俺達は悩んでの結論だったが、彼女は何もいらないと、感情の起伏なくきっぱり言い放つ。
ロロとアイリーンが互いに目を合わせ、眉を潜めながら困惑している。
「いいのか?」
代表として、念の為確認する。
フォースィは左右の腰に手を乗せると、半分呆れながら説明を始めた。
「良いも悪いも、私が薬を使う状況になっている時点で、貴方達は全員死んでいるから。悪いけれど、そうなる前に撤退するわよ」
淡々とした表情での言葉に、俺達は息を飲まされる。
「………冗談よ」
後付けされた笑顔を見せられたが、全く冗談に聞こえなかった。
「気遣いは不要という意味よ。とにかく貴方達は、自分を優先して生き残る事を第一に考えなさい。どこかの冒険解説職程ではないけれど、世話位は焼いてあげるから」
冒険解説職。その言葉に、俺は周囲をゆっくりと見渡してみるが、目立つはずの二人の姿が既にない。
「二人なら、既に森の中に入っていったわ………大丈夫よ。ああ見えて、誰よりもしぶといから」
フォースィも森の奥を見通すように目を細め、頬を小さく緩めていく。
「ギルドでも気さくに話していましたが、フォースィさんは、ショーンさんとお知り合い何ですか?」
俺が聞きたかった問いを、ロロが代弁してくれた。
「知り合い? そうね」
意地の悪そうに、フォースィが口元に指を置いて軽く肩を揺らす。
「もし名のある冒険者の中で、彼を知らない人がいたら………それは素人ね」
明確な回答ではなかったが、少なくともあの冒険解説職がただ者ではない事が再認識できた。特に情報が更新された訳ではないが、益々彼についての疑問が増えた事だけは確かである。
「さぁ、行きましょう。他のパーティは既に森の中へと入っていったわ」
フォースィは俺達に背を向け、森に向かって歩き始めた。




