②誰に対する誓い
「ですが、御主人様が命を呈して彼らを連れて帰ってきてくれました。ドリスさんの言い分ではありませんが、もしも御主人様がいなければ、あの二人は間違いなく森の中で朽ちていたことでしょう」
事実だが、それは青年にとって素直に受け止められるものではなかった。
沈黙に耐え切れず、青年はが残っていた酒を一気に飲み干す。
「くそ………またやっちまった」
横に立っていたコルティに体を向け、彼女を見上げた。
「悪ぃ。一分だけでいい………」
そう言い、青年は彼女の濡れたエプロンに顔を沈める。
「今更何を仰います。何分でも構いません………落ち着くまで、お傍にいますから」
コルティは自分の体に沈んでいく主人の髪をゆっくりと整える様に撫で続けた。
「情けない………何年、いや何百年経っても、一向に慣れないんだ」
「人には慣れなくてもよい事が、数多く御座います。そして慣れてしまってはならない事も同じくらい存在します。今度の件も、その一つです。御主人様が、御自身をそこまで責める要素は何一つありません」
メイド服の裾から水滴が垂れ始める。
「………すまん」
青年が顔を戻し、鼻をすする。
「お前もそのままだと風邪をひく。報告する前に、着替えてこい」
「畏まりました」
コルティがスカートの裾を摘まんで小さく一礼すると、青年の傍を抜けて自室へと入っていった。
青年は再び一人になった居間で椅子に背中を預けると、熱くなった目頭を擦りながら天井に顔を向ける。
「クソったれ共め。落とし前は必ず付けさせてやるからな」
冒険解説職が故に、二人の前だったが故に、青年の行動には制限があった。青年は拳を強く握りしめ、あの時、包囲してきた盗賊達の下品な顔を思い出す。
「どこのどいつか知らないが、覚悟しておけ………化けの皮は、剥がす為にあるんだからな」
その下の顔には、一体何が書かれているのか。青年は顔に手を置いて、肩を小さく振るわせる。
青年は小さく笑っていた。




