⑦冒険者という存在
「俺がついていながら………すまない」
ショーンの独り言の様な呟きに、ドリス嬢は視線を向けずに太い腕を組んだ。
「ダーリン。ただの随伴者である冒険解説職が謝っちゃ駄目。むしろ、ダーリンがいてくれたお陰で、彼等をここまで連れて来られたのヨ?」
そう言い終えると、ドリス嬢の大きな手がショーンの肩の上に乗る。
何でも知っており、何でも出来る彼は、それこそ自然体のまま立っていたが、俺には全身に力が入っていないように見えた。周囲の冒険者からは、冒険解説職はやはり無能だと囁く声が流れてくるが、ショーンもドリス嬢も何も反応しない事が、反って孤独の様な哀しさを訴えているようだった。
俺は周囲に気付かれないよう、拳を強く握りしめた。
「リュウ」
彼にも悪辣な言葉は耳に入っているのだろうが、ショーンはその一切を無視するように俺の名を呼んだ。
「あ、あぁ。何だ?」
俺も彼の行動に合わせるよう、静かに彼に顔を向ける。
「悪いが、ロロと一緒に、家にるコルティに事情を説明してくれ。恐らく、街医者を連れて来る流れになると思うが………その手伝いをしてやってくれ」
言葉にはしなかったが、コルティが亜人である事に支障をきたすかのような言い方のように聞こえた。
「必要ならギルドの名前を出しても構わないワ。とにかく急いで頂戴」
「お、おう!」「分かりました!」
俺とロロは、すぐにギルドを飛び出す。
―――その日。
冒険解説職を雇った青銅級冒険者が、盗賊達にしてやられた事は多くの冒険者達の知る所となった。ある者は盗賊達の存在を危惧し、ある者はシランド達を等級に見合わない実力だったと酒の肴にして笑っていた。
俺にとっては大きな事件だが、殆どの冒険者達にとっては日常の茶飯事の一つでしかなかった。
何が正しいのか、それは誰にも分からない。
だがそれが、冒険者になるという事だった。




