④襲う側、襲われる側
青年が先に口を開く。
「シランドとダッカ―は前面を、俺は後方の敵を一掃する。そして先に終わった方が合流する」
「………イイノカ?」
「一人の方が楽なんだ。それにお前達も、二人の方が慣れているだろう?」
感情論だけで人員を割り振る事は、自分も仲間もかえって危険に晒しやすい。それを無言で即座に理解できたシランドとダッカ―は、青年の提案にそれ以上の言葉を挟まなかった。
「では、行きましょう。また後で!」
シランドとダッカーが同時に前へと飛び出す。
「さて、と」
青年は直立し、籠手の締まり具合を確認する。問題がないと分かっていても、この所作が青年にとって気持ちを切り替える為に重要な、長年の癖となっていた。
久々に一人での戦いである。森に覆われた場所では視界も悪く、時折手足に当たる枝葉が青年の集中力と平常心を奪ってくる。さらには不意の攻撃から守ってくれる仲間もいない。
心配という名の下、コルティに怒られる事は間違いない。状況によってはケリケラも追加される。
「何はともあれ、無傷で帰らないとな。悪いが、そういう事で手加減は出来ない………先に謝っておくよ」
青年の独り言に合わせたかのように、周囲に汚れと鎧の破損が目立つ数名の荒くれ者が現れた。
「へっへっへ。金目のものを置いていけば、命だけは助けてやるぜ」
「馬鹿野郎! それは俺達のセリフじゃねぇか!」
先手を取って代弁した青年に、大の大人たちが一斉に怒り出す。
だが青年は、『いやいや』と右手を顔の前で左右に振って苦笑する。
「襲われる側の方が強い時、この言葉は有効になるんだ」
視界に入る盗賊は四人。それと大木の上に弓手が一人。
まず青年はズボンのポケットから小石を握るとそれを取り出し、腕を垂らしたまま太腿の横で親指で弾いた。
大木で屈んでいた弓手があっさりと落下する。
「なっ!?」
何が起きたのか分からず、盗賊達が一斉に後ろを向く。
「これで安心っと。不意の攻撃だけは今も苦手だからな」
続いて青年は、腰から片手剣を引き抜いた。装飾もなく、誰が見ても市販の武器である。
「すまないが、久々に人を斬るんだ………手加減を間違えたら謝るよ」
瞬間。
青年の姿は盗賊達の視界から消えていた。




