③秘密の共有
ダッカーが背中の弓を大きな手で掴むと、緩めてあった弦を張り直し始めた。
「十から二十といった所か」
「ソンナトコロダ」
青年には違和感のある方向しか分からなかったが、シランド達の言葉を入れて自分の情報を更新する。
彼らは周囲を静かに一瞥すると、青年に視線を向けた。
「ショーンさん」
そして青年の名前が呼ばれる。
「案内はここまでで結構です。申し訳ないが、貴方を巻き込む形となってしまった」
「巻き込むも何も、どこまで予定していたのやら………まさか、俺だけこの状況で帰れと?」
青年が鼻で笑い、小声のまま肩をすくめた。
シランドも鼻で笑い返す。
「予定も何も。それこそ過大な評価ですよ。小銭程度ですが、恩人に渡せればと思って声を掛けた程度です。戦わせるつもりなんて、欠片も考えてなかったですよ」
盗賊達が先に気付けた理由は分からないが、シランド達にとって、青年を成行きの形で戦わせる事までは想定していなかったようだ。
「ワレワレガ、テキヲ、ヒキツケル」
その隙に逃げろとダッカ―が提案するが、青年は先手を取れる敵がみすみす自分を逃す隙を見せるだろうかと、腕を組む。
「感謝と文句、どちらも言いたい事はあるが………ここは、俺の方から提案した方が良さそうだ」
脳裏にコルティが眉を潜める顔が目に浮かぶが、止む無しと息を吐く。
「この時だけは、仲間として協力しよう。敵も俺が冒険解説職だからと逃がす理由もないからな」
一人を逃がす為に必要な労力を割くよりも、三人でこの窮地を乗り越えた方がずっと建設的である。
「代わりに、報酬の上乗せをそれなりに要求する。勿論、ギルドには秘密で頼む」
冒険解説職が職務中に個別の依頼を受けて報酬を得る事は、給与の二重取り扱いとなり、規定違反となる。
「ドリス穣相手に嘘ですか………はぁ、分かりました。それでいきましょう」
通常、冒険解説職を戦いに参加させる為には、冒険者が依頼放棄を宣言しなければならない。その場合、違約金が発生し、さらに冒険者としての評判も落ちる。
シランドも青年も、互いに利益が一致した提案を飲み込み、小さく頷き合った。




