②森の中の異音
「ショーンさん。この森についてはどこまでご存知ですか?」
切り拓かれた森の街道の半ばから道を外れて中に入り、獣道に近い踏み慣れた細い地面を見付けて歩く事、十数分。青年を雇った張本人であるシランドが、暇潰しがてらに情報を求めてくる。
青年は諦めて小さく息を吐き、自分の仕事を果たす事にした。
「グーリンス南部の森は、魔女の森と違ってどこにでもある普通の森だ。広さはそれなりにあるが、出てくる魔物は猪や狼といった野生動物程度。ギルドの定期依頼で増えた獣を退治したり、業者に代わって薪を集めたり、小遣い稼ぎに薬草や香辛料を集めに来る冒険者も多い」
だが、ここ最近盗賊の目撃情報が相次いでいる。情報量の割に被害の数は少ないが、街道を通る商人を筆頭に、若手の冒険者もその餌食となっていた。
「………噂では、この森のどこかに放棄された砦を拠点にしているとの事だ」
あると言い切ってしまう事も出来たが、青年は情報の確度を少し落とす。
「砦………ですか。もしも奴等が根城にするならば、この上ない物件になりますね」
やはり雇って良かったとシランドが小さく笑う。
「………マテ」
先頭を歩くもう一人の冒険者、ダッカ―が足を止めた。
それに合わせて、シランドの表情が徐々に硬くなる。
青年は彼等の理由とは異なる形で、二人と同じ結論に行き着いた。
「囲まれているな」
青年は自分達が原因ではない、周囲で踏み潰されていた植物や、不審に折れていた枝葉に視線を向ける。そして耳を澄ませると、風に運ばれていく自然ならざる異音や不規則な雑音に違和感を拾い始めた。
シランドやダッカ―、そして青年のメイドであるコルティの様に、周囲の殺気や気配を即座に探る事は出来ないが、青年は長年培ってきた経験と数多くの知者、強者からの教えにより、それに近い技を体得している。




