①森の中の二人と一人
「してやられた」
青年は光の半分が届かない深い森の中の茂みを分けながら、二人の冒険者の後ろをやるせなく歩く。
グーリンスの街から南に進んだ森の中で、旅人や商人を襲う盗賊の目撃情報が相次いでいる。掲示板で二人が拾ってきた依頼は、その森の調査であった。
盗賊の数や質の調査を最低限の達成条件とし、彼等の根城の発見や場合によっては幾人かの討伐等、状況によって報酬の加算が成される。典型的な偵察や索敵といった類の依頼である。
「いえいえ、正当な依頼ですよ」
「ウム」
顔なじみとなった冒険者の二人が意地悪く笑っていた。
「ぐむぅ」
一人前の冒険者の証である青銅級の彼らが、まさか冒険解説職の自分に声を掛けてくるとは思ってもみなかった。
青年にとって完全な誤算である。
本当の依頼主が分からないよう、遠回しで出した調査依頼に、まさか自分自身が帯同する事になるとは、全く想像だにしていなかった。
「確かに、お前達の級で冒険解説職を雇う事は………駄目ではないが………普通は、しないんだぞ? 見てただろう? 他の奴等の顔を」
ギルドの窓口で申請した際の、周囲の目の大きさを一人一人丁寧に計ってやりたい。青銅級の冒険者が、真顔で冒険解説職を雇うなど、酒場のカウンターで堂々と牛乳を頼んだ方がまだ冗談としてはウケがいい。
飲んだくれている口先冒険者にとっては、この先数か月のネタに困らなくなる。それ位の出来事だった。
「いえいえ。どんなに経験を重ねても、未知の場所を案内出来る人材は必要ですから」
それに、とシランドが続ける。
「笑いたい奴等は、好きにさせておけばいいんですよ」
「ウム。チュートリアラ―ノ、ソンザイハ、オオキイ」
周囲の目を物ともせず、成功率を高める為に割り切れる思考と行動に移せる姿勢は流石である。同じ等級でも、彼等は頭一つは優に抜きん出ている。青年は額の上で手を滑らせながら、仕方なく二人の強かさを読み切れなかった自分を恨む事にした。




