⑦教訓から得られる視界
話を終えた俺は早々に、ロロ達の元へと戻る。
「どうでしたか?」
分かっていても訊ねざるを得ないと困った表情で、ロロとアイリーンが苦笑交じりで迎えてくれた。
俺は肩をすくめて首を左右に振ると、それだけで通じた二人が同時に溜息を吐く。
「お疲れ様でした」
短い言葉だが、ロロのそういった気遣いは嬉しい限りである。
「取り敢えず、出発の指示は貰ってきた」
俺は後衛の馬車で、まだ使えそうな荷物を前の馬車に移す事を提案する。重量は増えるが、そこは俺達が降りて歩けば済む話であり、何より損害の大きい依頼主に対しての、多少なりともの筋を通した事になる。
「リュウさん。亡くなった方も可能な限り馬車に乗せましょう」
アイリーンが、冒険者や私兵の遺体で損傷が比較的軽いものを布で包んで馬車に積む事、それ以外の遺体については、遺品になりそうな所持品を見繕い、回収する事を提案してきた。
それは、俺の知識にはなかった作法だった。
だが、今後にとって必要な流儀でもある。拒否する理由はない。
「………そうだな。悪いがロロと二人に任せてもいいか?」
「構いません。ありがとうございます」
彼女の提案を受け入れ、それぞれが行動に移す。
「方針は決まったのかしら?」
俺が二人を見送った後、馬車の中からフォースィが降りてきた。
俺は先程のやり取りを全て報告すると、彼女は特に反対も賛成も口にする事なく、頬を小さく緩めるだけだった。
そこへ、俺の中で一つの疑問が生まれる。
「もしやと思うが………あんたは、この規模の襲撃を予想していたのか?」
先輩冒険者に対して、やや礼に欠けた言葉だったが、彼女は特にそれを咎める事もなく、口を開く。
「襲撃すると決めた以上、相手は確実に成功するだけの手段で切れる最大の札を払ってくるものよ。考えてみなさい。自分達の命が賭けられているのに、わざとリスクを残したまま手を抜くなんてあり得ないでしょう? 亜人………蛮族だからといって、人間の方が常に賢い側に立っているなんて思っていると、痛い目を見るわよ」
複雑な言葉を必要としない、生きた教訓である。そして、その結果を実感している以上、彼女の言葉には確かな重みがあった。
「もう見た後さ。その結果がこの様なんだからな」
俺は周囲の惨状を改めて一瞥する。
「まぁ、自分が生き残っただけマシ。全滅しなかっただけ、さらにマシといった所かしらね」
「………取り敢えず、そう思える所から始めるよ」
これが黄金級冒険者の思考か。その域に達している事が羨ましくもあり、僅かながらの寒気も感じさせる。
俺はロロ達の背中を追いかける様に、仕事へと戻る事にした。




