⑥新旧、我慢比べ
「前衛は、俺だけでも十分守れていた………それに、俺の指示は後方で戦う前提で指示を出したんだ! それを誤って解釈して残ろうとしたお前達が悪いに決まっているだろう!」
後からなら、どうとでも言える事をリヴォルが並べ立ててきた。
思わず溜息が漏れる。漏らさずにはいられなかった。
「っ………後方で戦えなどという前提は、微塵も感じ取れなかったがな」
かつての俺も、周囲からは彼の様な姿で見られていたのだと思うと、複雑な気持ちが纏わりついてくる。つくづく、ロロ達に出会って良かったと学ばされる。
だが、だからこそ、この会話そのものが不毛であり、終わりの見えない問答だという事を、他でもない俺自身が良く知っている。どう言い換えようとも、取り繕うとも、どちらが正しかったという結論には至らず、詮索する事すら意味を成さない。
「もういい。分かった」
相手から出来ない以上、俺から会話を切る。
「あんたの言う通り、俺達に責任があるというのならば、到着後、ギルドに訴えればいい。どちらの責任にしろ、これだけの損害になったんだ。俺達で判断をどうこう下せる状況じゃない事くらいは分かるだろう?」
感情的になっている人間に正論は通じない。ならば、こちらが不利にならない程度で逃げ道のような選択肢を与え、状況を先に進めるしかない。
「ギルドが、俺やロロに責任があると判断したのならば、素直に従ってやる」
尤もこれは俺が、『依頼の全責任はパーティリーダーにある』という知識があったからこそ選べた行動でもある。やはり、人から教わる事の重要性は計り知れない。
「良いだろう。だが、お前達に必ず責任を取らせてやる………お前の提案通り、今は残った馬車で目的地を目指す」
「………了解だ」
金属で覆われた指を向けられたが、俺は短く了承してすぐに振り返る事にした。
視界から彼の姿を追い出し、肩を大きく上げて息を全て吐き出す。
改めて自分を褒めてやりたい。
常に俺の思考の中に、ロロやアイリーンの顔を思い浮かべてきた事で、平常心を何とか保つ事が出来た。そうでもしなければ、今頃彼の顔面が凹む程に殴り飛ばしていたに違いない。




