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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
—生徒の見舞い—
120/128

③それは見果てぬ頂か

 ショーンがコルティの無言の意図に小さく頷く。


「アルゼット」

 もう一度彼女の名を呼び、ショーンはアルゼットの顔を上げさせた。

「確かに、お前には言えていない事がある………それは認めよう」

 目を瞑るコルティの横で、『だが』と続く。

「世の中には知らなくてもいい事がある。知れば、元の生活に戻れなくなる事もある、時には命を狙われる事もある、最悪敵同士になる事だって………俺は、お前にそんな世界で生きて欲しくはない」

「それでも―――」「それでも」

 ショーンが言葉を遮る。

「………もしそれでも、俺の事を知りたいのならば、強くなれアルゼット。少なくとも、俺が倒した魔獣の数を倒せる程度にはな」

 ショーンが自分の服を掴む彼女の手を取り、一本一本丁寧に指を解く。そして全ての指を服から手放させると静かに立ち上がり、無言を貫いていたコルティもそれに続く。


「先生!」

 扉を出ようとしたショーンの背中を、アルゼットが呼び止めた。

「………何体ですか? 何体倒せば私を認めてくれますか?」

 その答えは、彼が口にした条件に通じる。


 ショーンが振り向き、手の甲を見せる形で五本の指を全て開く。

「………五十だ」

「五十匹」

 アルゼットが目を大きくさせた。

 銀等級(シルバー)の認識票を持つ上級冒険者の視点でも、それは異常だった。事実ならば、冒険者の最高位に匹敵する。

 そんな彼女の表情を余所に、ショーンがいつもの意地の悪そうな微笑をつくりだす。

「一日でそれだけ倒せるようになったら、いくらでも教えてやる」

 そう言って彼は冗談めかしく手を振り、部屋を後にした。

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