①重症の教え子
「先生。どうして私だけ、入院が長いんですか?」
二度目の見舞い。アルゼットは清潔なベッドの上で師を相手に頬を膨らませていた。
彼女の隣では、座ったままのコルティが黙々と赤い果実の皮をナイフで剥いている。
「馬鹿垂れ。怪我だけなら、お前が一番の重傷だからだ。左腕に肋骨三本を綺麗ぇ~に骨折! 全身打撲に両足から大量出血、さらには股関節の脱臼のおまけ付き! それでよく生きて帰れたもんだ」
ショーンが、彼女の赤い髪の頭頂部を払うように平手打ちする。
「痛いです。先生」
「じゃぁかやしい! 生きてる証拠だ! コルティの魔法がなければ、迷宮から抜ける事すら叶わずに魔物の餌だったんだぞ!」
仮に脱出出来たとしても、半年以上は安静になる程の怪我だったと、腕を組むショーンの怒りが収まらない。
「だって、しょうがないじゃないですか」
口を尖らせ、不貞腐れる彼女の前に、苦笑したコルティが一口分に斬られた果実の皿が届けられた。彼女はそれを受け取り、小動物の様に先端から小刻みに齧り始める。
何口かつけ、アルゼットがショーンに上目遣いで視線を送った。
「あと三匹もいたなんて、予想外も良い所です」
銀級が同等級相当の敵に一対一で負ける訳にはいかない。彼女は、加勢してきたシランドやダッカ―の支援を受けつつも、ほぼ無傷でデスタウロスを討伐した。
そして、二人に気絶したリュウ達を担いで上層へと上がらせた瞬間、二匹のデスタウロスが左右の通路から現れたのである。シランドとダッカ―は魔物の正体にまでは気付いていなかったが、アルゼットは後続の敵を引き受けると誤魔化し、一人残ったのである。
そして二匹目を倒した時には、左腕を折っていた。さらに三匹目を倒した頃には、岩壁と床に一度ずつ叩きつけられ、もう立てずにいた。
そこに現れた四匹目で、彼女は死を覚悟する。




