⑬強さの尺度
「な、なぁ」
ようやく飲み物を口に出来た俺は、自信のない声で尋ねる。
「ショーン………さん。あんたは一体何者なんだ?」
「何者、とは。随分と意味が広いな」
既に器を空にしていた正面の男が左右の指を交互に組み、その中心に顎を乗せた。
「まぁ、いい」
それ以外の言い方を出せなかった俺の顔を数秒程覗き見た彼は、指を解いて背もたれに体を預ける。
「腐れ縁の友人に言わせると、俺はどうも優し過ぎるらしい」
俺が求める答えとは、随分と遠かった。
だが、ショーンはやや視線を上げ、遠くを見る様に続きを紡ぐ。
「その性格が故に、今までに多くのものを得てきたが、それ故に大切なものも失ってきた………それを分かっていながら、それでも捨てきれない哀れで弱い男、それが俺さ」
人が良いのは分かっている。
「あんたが弱い訳ないだろう」
本当は強いと言いたかったが、またしても俺の情けない感情が言い方を変えてしまった。だが、銀級のアルゼットを圧倒できる力、ギルドの規約を把握した上で自分の思う通りに事を進められる知力をもった彼が弱い訳がない。
「リュウからすれば、そう思うかもしれない」
だが、本質はそこではないとショーンが語る。
「俺の言う強さとは、自分自身の望みを叶える能力に至る事だ。残念だが、俺にはまだその域に達していない」
「じゃぁ、あんたが求める望みって………」
一体どれだけ大きな望みなのか。俺はその続きを問おうとした。
だが、ショーンはその問いに答える事なく、静かに立ち上がる。
「それを教えられる程、お前はまだ強くなっていない。悪いな」
先に行くと、彼は二人分の代金を置いて背中を見せてしまった。
「強さ………か」
俺にはまだ理解できない強さの尺度が存在する。今はそれしか理解できなかった。




