⑫二つに一つ
悔しいが、ショーンの言動に無駄がない。冒険解説職どころか、もっと上の冒険者としても、十二分に通用するかもしれない。
親しくなったと言い難いが、謎の多い人物である。
「さて、リュウにも伝えておく事がある」
ショーンが横を通った給仕に二人分の飲み物を注文した。
「先程の商人護衛の件だが、俺達も一緒に隣街のグーリンスに行く事になった」
「隣街………一緒?」
二人分の飲み物がテーブルに届けられる。
「王都の冒険者ギルドに召還された………つまり、異動だ。ここには戻ってこない………当然、コルティとティリアも一緒に行く事になる」
ショーンが冷えた麦茶を手に取り、半分を一気に飲み干す。
「………お前はどうする?」
「どうするって………何故俺に聞くんだ?」
俺も出された木製のコップを掴むが、そのまま動きが止まる。
「何故も何も、リュウ。お前は俺の生徒だ。まだまだ生意気ではあるが、それでも声もかけずにいなくなる程、俺も甲斐性なしじゃない」
どうするも聞かれても、すぐに答えが出てこない。
視線が泳いだ表情を見られたのか、ショーンは指を二本立てた。
「選択肢は二つ」
一つ。このままアリアスの街に残る。
一つ。共にアリアスの街を出る。
その後の道は複数あれど、最初の一歩はこの二つしかないと言い切られた。
「お前との約束は守る。仮にこの街に残ると決めても、俺はお前が金を用意するまで、ティリアを預かっておく」
心配はないと、ショーンが言葉で背中を支えにくる。
「お、俺は………」
シランドやダッカ―は、商人護衛の依頼でこの街を出ていくが、その先は分からない。
ロロは、あいつだったらどうするだろうか。つい最近まで他人だった顔ぶれが、いつしか俺の選択肢を影響する位置にいた。
ショーンが残った麦茶を一気に飲み干し、空になったコップをテーブルに置く。
「今決める必要はない。まぁ遅くとも、俺達が出ていく日までに答えてくればいい。一応、商人が乗る馬車にお前の名前も入れておく」
「あ、あぁ………済まない」
それが今の俺の精一杯だった。




