⑪言葉の裏にある交渉
シランドが袋の中を覗き、後ろから背の高いダッカ―が覗き込む。
そして二人が再びショーンに視線を戻す。
「………いいんですか?」
「リュウの命を救ってくれた礼も入ってる。面倒だから一緒に入れておいた。がははは」
シランドが我慢出来ずに、マーガレッタ嬢に視線を向けた。
「だから、こっちを見るんじゃないよ! こっちとしては、その金が前金なのか、迷惑料なのか、謝礼なのか見分けがつかないんだからさ!」
成程。
俺は、改めてショーンの強かさに感心する。
この人は嘘を言っていない。前金と口にすれば『依頼』として見なされるかもしれない。その場合、ギルドが下した処分に違反する可能性が高い。だが、この街から出るなという冒険者の行動を制限させる為の迷惑料としてならば、『依頼』にならない。仮に触れたとしても、謝礼金と混ざっている以上、正確な金額は分からない。後から幾らでも訂正出来る。
「分かった。期待に応えるよう、全力を尽くさせてもらう」
「あぁ。頼む」
再度、ショーンとシランド達が握手を交わす。
言葉にせずとも、互いの落とし所を正確に把握していた。目指すべき冒険者の姿の一つである。
「あんた、やり過ぎは気を付けなさいよ?」
煙管を吹き終えたマーガレッタ嬢が、座り直したショーンの代わりに立ち上がり、苦言を呈する。
「分かってますよ。いつもすいません………あ、お金落としましたよ」
ショーンはテーブルの下に潜り、手の中から落とした一枚の銀貨をテーブルの上に置く。
「………本当に、気を付けなさい」
それ以上何も言わずに銀貨を拾った彼女は、ゆっくりと受付へと戻っていった。
「そういえば、珍しく静かだったな」
あっという間に二人きりになった。
「まぁ、な」
俺が口を挟んでいい会話ではなかった。それは理解できた。




