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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第十一章 初級冒険者、生還する
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②謝罪の混ざった感謝

 薄いカーテンが風に押されて、ゆっくりと波打つ。


―――風。


 俺ははたと思い出す。

「そうだ、アルゼットさんはっ!?」

 ロロ、シランドにダッカ―。次々と名前と顔が脳裏を()ぎった。

 だが、ティリアは口を閉じ、何も答えない。

「教えてくれ、ティリア。ロロは? 皆はどうなった!?」

「………言えない」

 その言葉に、俺は最悪の展開が浮かび始めた。

「言えないって!? なぁ、教えてくれ!」

 俺は包帯で包まれた両手で、彼女の細い腕を掴んでいた。


「おぃおぃおぃ。相変わらず、反省しない奴だな。もうちょっと、うちのメイドを丁寧に扱ってくれないか?」

 カーテンをめくり、見覚えのある二人が現れた。

「ショーン………」

 先程の風が嘘のように、ピタリと止む。

 視線をずらすと、彼のやや後方に立つメイドのコルティが、こちらをゴミか虫の如く見降ろしている。

「―――さん」

 彼女が人を見る眼に戻った途端、穏やかな風が再び吹き始めた。

 彼女の視線は、自然をも操れるらしい。

 理不尽極まりない。



「何はともあれ、無事の帰還だ。一応、お疲れさんと最初に言っておこう。だが―――」

 ショーンは持っていた花束で俺の頭頂部を軽く叩くと、約束を破った罰だと苦笑する。

 彼が花束をティリアに渡すと、彼女は小さく一礼し、席を外した。

「それにしても、運が良いというか心底悪いというか………デスタウロスと二回も鉢合わせして生還した白級冒険者(ルーキー)なんて、お前達位じゃなか?」

 窓横の壁にもたれたショーンが、普通は死ぬと肩をすくめる。


「………あんたの、いやショーンさんの言う通りだった」

「ほぉ?」

 珍しい返しに、ショーンの頬が小さく緩む。

 俺は先に進まなければならない。言うべき事は、言わなければならなかった。

「体力さえあれば戦える、生きて帰れる。今まで受けた訓練は、無駄じゃなかった事が良く分かった」

 俺の言葉に、今度はコルティが目を大きくさせている。一方のショーンは、無言のまま目を細めるだけだったが、揶揄う事無く『そうか』とだけ返してくれた。

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