②謝罪の混ざった感謝
薄いカーテンが風に押されて、ゆっくりと波打つ。
―――風。
俺ははたと思い出す。
「そうだ、アルゼットさんはっ!?」
ロロ、シランドにダッカ―。次々と名前と顔が脳裏を過ぎった。
だが、ティリアは口を閉じ、何も答えない。
「教えてくれ、ティリア。ロロは? 皆はどうなった!?」
「………言えない」
その言葉に、俺は最悪の展開が浮かび始めた。
「言えないって!? なぁ、教えてくれ!」
俺は包帯で包まれた両手で、彼女の細い腕を掴んでいた。
「おぃおぃおぃ。相変わらず、反省しない奴だな。もうちょっと、うちのメイドを丁寧に扱ってくれないか?」
カーテンをめくり、見覚えのある二人が現れた。
「ショーン………」
先程の風が嘘のように、ピタリと止む。
視線をずらすと、彼のやや後方に立つメイドのコルティが、こちらをゴミか虫の如く見降ろしている。
「―――さん」
彼女が人を見る眼に戻った途端、穏やかな風が再び吹き始めた。
彼女の視線は、自然をも操れるらしい。
理不尽極まりない。
「何はともあれ、無事の帰還だ。一応、お疲れさんと最初に言っておこう。だが―――」
ショーンは持っていた花束で俺の頭頂部を軽く叩くと、約束を破った罰だと苦笑する。
彼が花束をティリアに渡すと、彼女は小さく一礼し、席を外した。
「それにしても、運が良いというか心底悪いというか………デスタウロスと二回も鉢合わせして生還した白級冒険者なんて、お前達位じゃなか?」
窓横の壁にもたれたショーンが、普通は死ぬと肩をすくめる。
「………あんたの、いやショーンさんの言う通りだった」
「ほぉ?」
珍しい返しに、ショーンの頬が小さく緩む。
俺は先に進まなければならない。言うべき事は、言わなければならなかった。
「体力さえあれば戦える、生きて帰れる。今まで受けた訓練は、無駄じゃなかった事が良く分かった」
俺の言葉に、今度はコルティが目を大きくさせている。一方のショーンは、無言のまま目を細めるだけだったが、揶揄う事無く『そうか』とだけ返してくれた。




