①清潔なベッドの上で
目を覚ますと、俺は大きな部屋の隅にあるベッドに寝かされていた。
顔を横に向けると、他のベッドを仕切るカーテンが視界に入る。
「………病院?」
確かアリアスの街には、大きな病院があったと記憶の引き出しが勝手に開く。
カーテンが開かれ、メイド姿のティリアが入って来た。
「ティリア」
「良かった。目が覚めて」
目を大きくさせる事も、喜び驚く高い声を上げる事もなく、彼女は同郷の無事を静かに喜んだ。
清潔な布団から腕を出すと、両腕は包帯で巻かれている。鈍痛に耐えながら手を動かし、全身に触れてみるが、皮膚の面積の方が圧倒的に少なかった。
「動かない方がいい。四日間の安静………今はまだ二日目」
「………そうか」
俺は丸二日寝ていた事になる。
体を動かして分かったが、見た目によらず痛みが少ない。だが、体を起こそうとしても、思うように腹部に力が入らない。
上半身を起こしてずれた布団を、ティリアが腰の位置まで掛け直してくれた。
「………死にかけたよ」
目を瞑り、俺は事実を述べた。
「うん」
「正直………怖かった」
短い言葉一つ一つに、ティリアは相槌を打ちながら、水差しから一杯の水をコップに注ぐ。
俺はそれを受け取り、一口だけ水を喉に通す。
「だが、それ以上に悔しかった」
「うん」
何もできない自分。自分を頼ってくれた者を守れなかった無力さ。誰かに助けてもらった情けなさ。その全てが一度に蘇る。
「………強くなりてぇ」
「うん………いつか、きっとなれる」
顔を上げると、窓の光を背中に受けていたティリアが小さく微笑んでいるように見えた。
だが、彼女はすぐに窓の方へと向くと、風を通そうと窓に隙間をつくる。




