表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第十章 初級冒険者、悪夢と再び遭遇する
104/128

⑩冒険者の背中

 デスタウロスの危険度(等級)はアルゼットと同じ銀級(シルバー)。俺達は勿論、青銅級(ブロンズ)のシランド達ですら、太刀打ちできない。

 俺は下唇を噛み、自ら声を封じた。

 ダッカ―に体重の半分以上を預けていた俺は、崩れた扉、上層へと続く階段の前へと運ばれていく。シランドが先に到着し、こちらも可能な限りの速さで合流に向かっていた。


 情けない。


 同じ仲間のロロどころか、助けに来た彼らの世話になり、アルゼットの援護にすら入れない。

 敵わない魔獣と分かっていても、それを口にしたくない自分が確かにいた。

「………強く、なりてぇ」

 思わず呟く。


 アルゼットがデスタウロスの視界を誘導している間、俺達は無事に休憩所として扱われていた広間へと入る。扉は既に崩れ落ちており、魔獣から身を守るには殆ど意味を成していない空間だが、シランド達は階段横にある壁を背に俺達を降ろした。

 そして、俺の前に二本の回復薬を置く。

「いいか? 体が動くなら回復薬(こいつ)を使って、階段を上がれ」

 上層の広間も休憩所となっており、危険はない。彼は真剣な面持ちで、かつ分かりやすい言葉と速さで説明する。

「………!?」

 視線を動かし、満足に動かない首を震わせながら、シランドとダッカ―を一瞥する。

「俺達は、少しでも奴の足を止める」


 無茶だ。

「う………ぁ」

 声に出したくとも、既に体力は尽き欠け、体がまともに動かない。

 泳ぐ視線からこちらの意図を汲んだのか、シランドが眉を潜めて苦笑する。

「いくら俺より上の先輩でも、年下の女の子を一人残して逃げるっていうのも………なぁ?」

 彼がダッカ―(相棒)を見上げた。

「アア。カッコワルイ」

 荷物をその場で全て降ろしたダッカ―は矢筒だけを背負い直し、弦を軽く弾いて張り具合を確認する。

「なぁに、心配するな。自分の身くらいは守れる。無茶も死にもしないさ」

 青銅級(ブロンズ)の二人が笑っていた。


 これが冒険者の姿だと思った。


 俺は、まだ何も冒険者を理解していなかった。そして、自分の無力さを噛みしめながら、何も出来ない自分の情けない体を、その眼で見続けるしかなかった。

「さぁ、行こうぜ。戦友」

「アア」

 シランドとダッカ―が横に並び、拳を重ねる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ