9.執着の始まり 王太子殿下視点
シルヴァンへの嫉妬で仕事も手がつかなくなり、それでも1人で生徒会室で終わらない仕事をしていた。
仕事に手が付かないだなんて、初めてのことだ。
アンネリーナ嬢の事が頭から離れない。
アンネリーナ嬢とシルヴァンは婚約をしたんだという事実が、重くのしかかる。
最悪の気分だ。
するとアンネリーナ嬢が忘れ物をとりに来た。
最初はアンネリーナ嬢の事を考えすぎて、幻でも見たのかと思った。
アンネリーナ嬢と2人きりになる事なんて、初めてだ。
「リオネル王太子殿下、シルヴァン様から聞いているかとは思いますが、私達婚約をしました。」
アンネリーナ嬢に声をかけられて、ハッとした。
「アンネリーナ嬢は…シルヴァンが好きなのか?」
思わず口から出てきたのは、そんな言葉。
アンネリーナ嬢は驚いた後に頬を染めて
「え、は、はい。お慕いしております。」
と言った。
心から愛してる女性から、他の男性を好きだと聞かされて私は冷静ではいられなくなった。
生徒会室にいるのは私とアンネリーナ嬢の2人だけだ。
ここで既成事実を作れば、アンネリーナ嬢は私のものになる。
こんなチャンスは2度とないだろう。
アンネリーナ嬢を手に入れたい、他の男になんて渡したくない、それしか考えられなかった。
「シルヴァンの妻ではなく、私の妃にならないか?」
「え、何をおっしゃって…。。リオネル王太子殿下にはジネット様という婚約者がいらっしゃいます。」
「私が愛してるのはアンネリーナ嬢だけだ。」
「わ、私はシルヴァン様の婚約者です。」
「それでも、アンネリーナ嬢が私以外の男と結婚するだなんて耐えられない。」
私が近づくとアンネリーナ嬢は後退るが、すぐに壁にぶつかった。
驚いている顔も、怖がっている顔も、全てが愛おしい。
逃げようとするアンネリーナ嬢を押さえつけながら、無理矢理キスをした。
アンネリーナ嬢はいい匂いがする。
「や、やめっ…。。んっ。んっ。」
アンネリーナ嬢が声を出した隙に、舌を口の中に入れて、夢中で貪るようにキスをした。
「愛してる。アンネリーナ。」
更に逃げようとするアンネリーナ嬢を、ソファに押し倒した。
「すまない。私はアンネリーナを逃してあげられない。」
夢中でキスをしながら、服を脱がせる。
「おやめください」と言いながら、アンネリーナ嬢が必死に抵抗しているのは分かるけど、男性の力には敵わない。
アンネリーナ嬢と早く一つになりたいとしか、考えられなかった。
涙でぐしゃぐしゃになって怯えてる姿ですら、本当に愛おしくて私は歓喜する。
欲望のまま身体を繋げると、今まで感じた事のない程の幸福と快感に包まれた。
「やめて、はぁ、はぁ、痛い、やめて、はぁ。」
「アンネ、愛してる、アンネ。」
泣きながら痛みに耐える姿が愛おしい。
「アンネ。アンネ。」
夢中で名前を呼んで、キスをする。
「んんっ。」
全てが終わってから、ようやく正気に返った私は、アンネリーナ嬢に無体を働いた罪悪感に襲われた。
「ごめん。。」
泣いているアンネリーナ嬢の頭を撫でようと触ると、ビクッと震えられて、余程怖かったのが分かった。
「ごめん。。本当にすまない。。」
それでも、私はアンネリーナ嬢の頭を撫で続けて、抱きしめた。
アンネリーナ嬢は抵抗もせずに泣き続けた。
ふとアンネリーナ嬢の顔を見ると、泣きながら少し驚いた表情をした。
「愛してる。」
今度はキスをしても抵抗されなくて、自分が受け入れられたような錯覚に喜びそうになった。
けれども、こんなひどい事をしたのに受け入れられるはずが無いとすぐに思い直した。
できるだけ優しくキスをして、優しく抱きしめた。
私の腕の中で泣き続けるアンネリーナ嬢。
こんな状況なのに、幸せだと感じてしまうだなんて、自分が醜い人間だと初めて知った。
「ごめん。。アンネリーナ。愛している。私の妃になってくれ。私はアンネリーナ以外何も望まない。」
それから、私は国王陛下に急いで会いに行った。
急用と言うとすぐに会う事ができた。
「リオネルが急用とは珍しいな。どうした?」
「私はキャペリー伯爵令嬢のアンネリーナ嬢を妃にと望んでおります。」
「…何を言っている。そんな事が許されると思うな。
リオネルの妃はスタンリー公爵令嬢のジネット嬢だろう。」
「アンネリーナ嬢と結ばれるのであれば、次期国王になれなくても構いません。」
「ダメだ!次期国王は絶対にリオネルだ!そんな事は認めない!アンネリーナ嬢が優秀だとしても、スタンリー公爵の後ろ盾が必要なのだ。諦めろ。」
「私は…先ほどアンネリーナ嬢と契りを交わしました。」
「…は?何を言っている。」
「私はアンネリーナ嬢を妃にします。…彼女は必死に抵抗しましたが、全ては私が一方的に望んだ事です。アンネリーナ嬢がモーティマー侯爵令息シルヴァンと婚約したと聞き、何が何でも彼女を手に入れたかったよです。」
「…なんてことを。。なんて事をしてくれたんだ、リオネル。ずっと優秀な息子だと思っていたのに、こんな愚かな事をしでかすとは。」
「アンネリーナ嬢には心から申し訳なく思っていますが、彼女を愛しています。」
「その彼女はリオネルを愛していないのだろう。」
「…はい。…彼女はシルヴァンを愛しています。」
「こんなことになってしまったら、シルヴァンとアンネリーナ嬢の婚約は解消されるだろう。しかし、リオネルの妃がジネット嬢なのは絶対だ。」
「…私はジネット嬢を妃に望みません。」
「確かにジネット嬢は性格に難がある。それでも、スタンリー公爵家の後ろ盾は必要だ。」
「アンネリーナ嬢を妃にできないのであれば、私は王太子を兄に譲ります。」
「それはダメだ。リオネルが次期国王になるのは私と王妃の悲願、それだけは譲れない。…ジネット嬢を王妃にしたら、アンネリーナ嬢を側妃にするように。それまでの間はアンネリーナ嬢を妾とする事を許そう。」
「…分かりました。」
「ただし、ジネット嬢よりも先にアンネリーナ嬢との間に子供を作るな。そんな事になったら国が揺れる。ジネット嬢との間に王子が産まれるまで、アンネリーナ嬢には子供ができないように薬を飲ませる。」
「…それは。。」
「これ以上の譲歩はできない。アンネリーナ嬢をずっと側に置きたいのであれば、この方法しか無いと思え。」
「…はい。」
アンネリーナ嬢の気持ちなど全く考えずに、私と父は話を進めていた。
ジネット嬢を妃にしなければいけないのは嫌で仕方が無かったが、アンネリーナ嬢と結ばれる事に幸せを感じていた。




