44.裏切り、離縁、新しい生活 フレデリックルート
リオ様と再び両想いになった私は、子供達とリオ様と共に、幸せに暮らし始めた。
リオ様の子供を伯爵令嬢が妊娠していると、伯爵令嬢から知らされるまでは。。
リオ様に限ってそんなはずは無いと思いながら、
『伯爵令嬢からリオ様の子供がお腹の中にいると伺ったのですが…何かの冗談ですよね?』とリオ様に聞いた。
「すまない。。本当にすまない。」
頭が真っ白になって、涙が溢れた。
リオ様が私を抱きしめようとしたけど、私に愛してると言いながら、他の女性を抱いているリオ様に触られたくないと咄嗟に思ってしまった。
「触らないでくださいませ。」と言った瞬間に、無理矢理激しく抱かれた。
妊娠中はお腹の子供が心配だから我慢すると、あれだけ自分で言っていたリオ様が。
怖くて抵抗しても、リオ様の力に敵わない。
気がついたら、出血していて血の気が引いた。
お腹の子は大丈夫なのかと思うと、体が震えた。
それからは朝から出産まで安静に過ごすように言われ、私はリオ様の事が一気に信用できなくなってしまった。
私の体調が悪いと聞いた、フレデリック王太子殿下とシルヴァン様が、お見舞いに来てくれたけど、涙が止まらない。
『大丈夫ですから、ご心配しないでください。』と言ったら、心配そうにしながらも退出して行った。
それからは、私は寵愛を失った出戻り側妃と噂され、王宮での私と子供達への風当たりは強くなった。
ロラン様は「アンネリーナ様ばかり、なぜこんなお辛い目にあわなければいけないのか」と怒りながら、私と子供達を守ろうとしてくれて、安静にしなければいけない私のもとへ子供達を連れてきて一緒に遊んでくれた。
フレデリック王太子もシルヴァン様も、私のことを心配して、事業計画を一緒に進めながら、私のことをよく気にかけてくれた。
私が第一王女を出産した後に、伯爵令嬢が第三王子を出産したら、風当たりは更に強くなった。
産後1ヶ月からは毎晩、リオ様に抱かれたけれど、子供達を守れていない状況で、リオ様との間に子供は欲しく無いと思って、妊娠しないように薬を飲み始めた。
医師も、産後1年間は妊娠を控えた方がいいと、薬を処方してくれた。
会社の事業計画で、外出する機会も増えて、ベッドの上で安静にしている時よりも、フレデリック王太子殿下、シルヴァン様との関わりも増えた。
子供達に酷い言葉を浴びせる人は絶えず、リオ様を頼っても改善されず、私がやめるように言っても、止める事ができなかった。
子供達から笑顔が消えていく。
大人の顔色ばかり伺うようになる。
もう王宮にはいられない。
フレデリック王太子殿下は変わらず、私に求婚を続けながら、『逃げたくなったら言って。僕を頼って。』と言ってくれる。
リオ様の伯爵令嬢との子供がいると分かってから1年近く経ち、私は、リオ様と離縁することを決意した。
「ねえ、アンネ。いい加減、ボーフォート王国からシーモア王国に一緒に逃げようよ。こんなに辛そうなアンネと、子供達を僕は見てられないよ。僕はアンネを愛してるんだ。」
会う度に、フレデリック王太子殿下は私に言う。
「…そうですね。」
「…え?」
私が肯定すると思っていなかったフレデリック王太子殿下は、驚いて固まっている。
「お願いです。フレデリック王太子殿下。私はリオ様と離縁して、子供達とシーモア王国へ行きたいのです。協力してくださいますか?」
「…もちろんだよ!僕が必ずアンネと子供達を守る。こんな辛い想いなんて、二度とさせない。」
私はフレデリック王太子殿下に同席してもらい、リオ様に離縁を申し出た。
悲しそうなリオ様を見ていると、決心が揺らぎそうになる。
私のことを「何があっても手放さない。」「絶対に離さない」「離縁は絶対にしない。」と言い、私に責め立てられても受け入れて、「戻ってきてくれ」と言うリオ様の手を取りそうになったけど、フレデリック王太子殿下の言葉で思い留まる。
これ以上、子供達に辛い想いはさせられない。
フレデリック王太子殿下に、リオ様が反対しても私をシーモア王国へ連れて行く準備はできてると言われても、尚も私に「愛してる」、「ずっと一緒だ」と言い募るリオ様を見ていると、リオ様を愛おしいと思う気持ちが溢れてくる。
「愛してます、リオ様。でも、もう終わりにしましょう。」
リオ様に抱きしめられて、キスをされる。
甘くて切ないキスは、唇が離れるのが寂しく感じた。
1週間の引き継ぎをした後、私はロラン様とフレデリック王太子殿下とともに、シーモア王国へ旅立った。
ロラン様は将軍の地位を捨てても、自分が忠誠を誓ってる私を守りたいと言ってついてきてくれて、心強かった。
ロラン様は多くの部下に惜しまれながらも、私と共にシーモア王国について来てくれたのだ。
フレデリック王太子殿下とロラン様と、子供達を連れて、馬車で2ヶ月かけてシーモア王国に到着した。
ロラン様27歳、フレデリック王太子殿下、私が23歳、ジョエル5歳、レティシア3歳の時だった。
リオ様と離れるのは寂しかったけど、子供達と一緒だったので賑やかな旅になった。
1年10ヶ月ぶりのシーモア王国の人々は、変わらずに私を暖かく迎えてくれた。
私は新しく屋敷を購入し、シーモア王国で以前に雇っていた使用人を中心に雇い直し、子供達とロラン様と暮らし始めた。
私も子供たちも、周りの目を気にせずにのびのびと暮らせるようになった。
独身になった私をロラン様は、デートに誘ってくれるようになった。
ロラン様とのお出かけは子供達も一緒の事が多いけど、たまに私とロラン様2人きりでのデートをした。
今までずっと一緒にいても騎士としてのロラン様ばかり見ていたから、ロラン様とのデートは新鮮な気分だった。
一緒にお買い物をして、ロラン様はこういう物が好きなんだと気づいたり、嬉しそうに笑う笑顔だったり、美味しそうに食べる姿だったり、驚いた表情だったり、ふとしたロラン様の表情と態度にドキドキさせられたり。
「今も変わらず、アンネリーナ様を愛しています。私は、アンネリーナ様を守るだけでなく、この手で幸せにしたいです。」
ボーフォート王国で私専属の騎士をしてくれていた時とは違い、ロラン様は私に「愛してる」とよく言うようになったし、私もロラン様を異性として意識するようになっていった。
私がロラン様を見て顔を赤くする度に、ロラン様は嬉しそうに微笑むので、その姿がかっこ良すぎて、更に顔が赤くなる。
2度目のデートの時、ロラン様が私の手を繋いで来たのに驚いて立ち止まり、ロラン様を見る。
ロラン様からこんな風に手を繋がれたのは初めてだ。
「すみません、お嫌だったでしょうか?」
「いいえ、びっくりしてしまっただけで…、嫌では無いです。でも、少し…緊張します。」
私の顔が少し赤くなる。
「良かった。嫌がられたらどうしようかと、内心びくびくしていたのです。アンネリーナ様に、私の事を意識していただけるようになって、本当に嬉しいです。」
ロラン様が満面の笑みで微笑むと、私の顔は真っ赤になった。
大きくて温かいその手に安心感を覚えて、ドキドキしながらも、それからはロラン様と手を繋いで歩くようになった。
ロラン様は仕事ぶりも優秀で、将軍の仕事をしていたのもあり、人に指示を出すのが上手かった。
私の護衛として、ずっと私の仕事を見ていたこともあり、仕事の内容をしっかり把握した上で社員へ指示を出してくれるのも、とても助かった。
以前、シルヴァン様と結婚していた時のように、今度はロラン様が私の仕事を手伝ってくれるようになり、ロラン様は私の仕事を安心して任せられる存在になった。
子供達の事も、実の父親のように可愛がってくれて、子供たちもロラン様に懐いていた。
一緒に住んでることもあり、子供達もロラン様に対して実の父親のように懐くようになった。
私を大切にしてくれるロラン様と、愛する子供達と暮らす穏やかな生活に私は幸せを感じていた。
リオ様がいない寂しさも少しずつ薄れていき、同時に少しずつロラン様に惹かれていった。
ロラン様となら、今のような幸せな家庭を築けると思うようになっていった。
優しく包み込まれるようなロラン様の愛と対照的なのは、強引だけど私が嫌な事はしない熱烈なフレデリック王太子殿下の愛だった。
フレデリック王太子殿下も、引き続き、私の事業を支援してくれて、更に週2回は私の屋敷を訪れて、私に求婚を続けながら子供達と遊んだりしていた。
「アンネ、会いたかったよ。」
フレデリック王太子殿下は、私に会うなり抱きついて来るし、「愛してる。早く僕の妃になったよ。」と愛情表現が大きかった。
ロラン様と私の雰囲気が前と違って来ている事に対しても、「ロランじゃ無くて僕を選んでよ。確かにロランはちょっと…いや、大分いい男だけどさ、僕だっていい男だよ。」と嫉妬を隠さない。
「なんですか、それは。」と笑って誤魔化しつつ、自分がロラン様とフレデリック王太子殿下の2人に惹かれていっているのを自覚していた。
「やだよ、アンネ。ロランの事を好きにならないで、僕を好きになって。絶対に幸せにするよ。ねえ、アンネも前よりも僕の事、意識してくれてるよね。今だって、顔が真っ赤だよ。」
「フレデリック王太子殿下は、ご自分の顔がいいのを自覚してくださいと何度も言ってるでしょう。」
「アンネ以外にはこんな事しないっていつも言ってるよね。やっと、アンネが独身になってくれたんだ。こんなチャンス二度と無いよ。遠慮なんてしてたら、アンネが他の男とまた結婚しちゃうじゃ無いか。」
「シルヴァン様と結婚していた時も、リオ様の妃だった時も、フレデリック王太子殿下が遠慮なんてしているところを見た事がないのですが。」
「アンネが誰のものになろうとも、求婚する事をやめられないくらい愛してるんだよ。」
いつも熱烈なフレデリック王太子殿下に、私の顔は真っ赤だ。
「それくらいにしていただけませんか。フレデリック王太子殿下。アンネリーナ様が困っております。」
ロラン様がフレデリック王太子殿下を止めようとするけど、「あぁ、ロランもいたんだね。ロランは下がっていいよ。僕とアンネの邪魔をしないでくれるかな。」とフレデリック王太子殿下は気にしない。
ロラン様は王太子殿下相手には強く出られない。
「ロラン様は邪魔などしていませんよ。フレデリック王太子殿下。後から来たのはフレデリック王太子殿下です。」
「そんな連れない事を言わないでよ、アンネ。ロランはいつもアンネと一緒にいて、ずるいよ。僕だってアンネと一緒に住みたいのに。僕が来た時くらい、アンネを譲ってくれたっていいんじゃないかな。」
不貞腐れてるフレデリック王太子殿下を、可愛らしく感じてしまい、少し可笑しくて笑ってしまった。
「ふふっ。不貞腐れないでくださいませ、フレデリック王太子殿下。フレデリック王太子殿下とロラン様に、シーモア王国へ私と子供達を連れて来てくださった事を感謝しているのです。幸せそうな子供達を見る度に、私も幸せな気持ちになります。本当に、ありがとうございます。」
「アンネが幸せで良かった。僕はアンネに頼ってもらえたのが嬉しかったんだ。これからも、アンネのためなら、なんでもするよ。」
「私もアンネリーナ様の為でしたら、全身全霊で努力致します。」
「ありがとうございます。私も…お二人のお役に立てる事があれば、なんでも言ってくださいね。」
「それなら、僕の妃になってよ。僕はそれが一番嬉しいな。でも、こうやってアンネと一緒にいられる事自体が、幸せなんだけどね。」
「私も、アンネリーナ様のお側にいられる事が、この上ない幸せです。ずっとお側にいさせてください。愛しています、アンネリーナ様。」
私の顔が赤くなる。
「ちょっと、僕の前でアンネを口説かないでよ。ロラン。アンネのこと、僕の方が世界で一番愛している自信があるからね。」
「失礼ながら、アンネリーナ様への愛は誰よりも負けない自信がございます。」
「王太子である僕に言い返すって、本当に失礼だね。ロランは手強くて困るよ。」
フレデリック王太子殿下とロラン様は、よく話をするようになり、仲が良くなった。
シルヴァン様と、リオ様も私に会いにやって来たり、
私の方から仕事で行くこともあったけど、片道2ヶ月近くかかってしまうために、あまり会う事はできない。
シルヴァン様も、リオ様も、私と復縁したいと言ってくれてはいるけれど、私はシーモア王国での今の生活に幸せを感じていた。




