40.幸せな時 リオネル視点 フレデリックルート
朝、目が覚めて、隣でアンネが眠っている事の幸せを噛みしめる。
ずっと会いたかったアンネが、今は毎日隣にいる。
体調が悪いのに、フレデリックの歓迎会に最後まで参加して、疲れてしまったのか、抱きしめてキスをしても起きない。
最近は常につわりで辛そうで、寝付けない上に夜中も何度も吐いてしまうくらい眠りも浅いのに、起きないのは珍しい。
昨晩も、疲れているはずなのに何度も起きて吐いていて、寝れる時にもっと寝かせてあげたいと思うのに、もう少しだけと言い訳をしながらキスをする。
もっとキスをしたくて、キスをしていると、その先までしたくなる。
アンネの妊娠が分かってから、体調の悪いアンネを抱いていない。
特に妊娠初期は、流産のリスクが高いから、子供に万が一があったらと思うと、我慢するしかない。
それなのに無意識に手はアンネの体を触り始める。
「んっ。」
「おはよう、アンネ。すまない、起こしてしまったか。」
眠ってるアンネにちょっかいを出しておきながら、そんな事をよく言うなと自分でも思いながら、アンネの体を触ってた手を引っ込める。
「おはようございます、リオ様。」
「体調は大丈夫か?昨日は体調が悪いのに、歓迎パーティーで無理をして疲れただろう。もっとゆっくり眠ってるといい。愛してる、アンネ。」
抱きしめて、キスをする。
「ありがとうございます。…私も愛してます、リオ様。」
あぁ、アンネは嘘つきだ。。
私を愛していたら、そんな悲しそうな顔をしながら、愛してるだなんて言わないはずだ。
他の男の事を思いながら、私に愛してると言う。
今もアンネがシルヴァンを愛している事など、私にだって分かる。
アンネが考える時間が欲しいと言ったのに、無理矢理連れ帰った。
アンネがボーフォート王国から逃れる前のように、私のことを愛して欲しい。
3年間、愛するシルヴァンとアンネは過ごしたんだ。
焦ってはダメだ。
シルヴァンを愛していたとしても、今のアンネは私の側にいる。
会えなかった日々に比べたら、何て贅沢な悩みなのだろう。
アンネを私のように無理矢理自分のものにしなくても、アンネの心を手に入れるシルヴァンが羨ましい。
アンネのお腹を触る。
私とアンネの子供が、お腹にいると思うと、堪らなく愛おしい。
愛する妻に、愛する子供。
私は本当に幸せ者だ。
昨日はフレデリックにエスコートされているアンネを見て嫉妬した。
でも、アンネが令嬢達から暴言を浴びせられていたと聞き、落ち込んだ。
アンネを見れば、泣いていた事が分かる。
もう二度とアンネを傷つけないと思うのに、アンネを傷つけてしまう。
フレデリックに
「『トリスタンの死はアンネのせいだ』とまで言われていたぞ、しっかりアンネを守ってくれよ。」
と辛そうな表情で耳打ちされて、頭が冷えた。
アンネの側にはロランがいるから、フレデリックとアンネの間に間違いが起こったはずがない。
ただ、フレデリックはアンネを心配しているのだと分かった。
すぐに、暴言を言っていた令嬢達を調べ上げて、王太子妃を侮辱した罪で裁いた。
堂々と大勢の前で言っていたので、証言はたくさん取れた。
今まで、注意するのみだったのが生ぬるかったのだ。
アンネは、私は大丈夫ですので…と言ったが、王族の威信に関わるからと言ったら黙った。
アンネはつわりが辛くても、よく働く。
休んで欲しいと言っても、起きているのも横になっているのも辛く、仕事をしてる方が気がまぎれると言っていた。
辛そうに政務をしているのを見ると、休んでほしくなるけれど、何をしていても辛い、横になりたい時は横になると言われてそれ以上何も言えない。
確かに仕事に熱中してる時の方が、少しだけ顔色がいいかもしれない。
こんな時、何もできないのが、もどかしい。
私とアンネの子供なのに、つわりも出産も辛いのはアンネだけだ。
しかも出産は命懸けだ。
無事に出産できることを祈る。
アンネが会社の事業でシルヴァンとフレデリックに頻繁に会うのは面白くなかったけど、私もできるだけ一緒に参加して、参加できない時もロランがアンネの側にいるから大丈夫だと自分に言い聞かせた。
本当はシルヴァンやフレデリックにアンネを会わせたくないけれど、アンネを閉じ込めて逃げようとされても困る。
今は、シーモア王国とボーフォート王国で鉄道を敷く計画をして忙しいようだ。
アンネの体調を気遣い、シルヴァンとフレデリックが王宮を訪れて事業計画を練ることも多いけど、現場の人間に指示を出しに行くことも多い。
仕事をしている時のアンネは生き生きとしていて、そんなアンネを見るのが好きだ。
的確に指示を出したり、案を出す姿は私から見てもかっこいい。
そんなアンネが、毎朝起きると私の目の前にいる。
アンネを抱きしめてキスができる。
本当に幸せだった。




