41.幸せ フレデリックルート
歓迎パーティーの翌日から、体調が悪くても私は仕事を再開した。
歓迎パーティーではボーフォート王国でも事業をする為に、出資者を募って、株の購入を持ちかけた。
シーモア王国での成功を伝え、リオ様の力も借りて、資金もたくさん集まりそうだ。
6年前に私の案で設立した世界初の会社は、既にボーフォート王国で大きく成長している。
今後はシーモア王国で開いている株式市場をボーフォート王国でも開いて、より多くの人から資金を集められるようにしたい。
ボーフォート王国に来てからも、シルヴァン様とフレデリック王太子殿下に会う機会は多い。
2人と会う時は基本的にリオ様も私と一緒にいるけれど、会えなくなると言うことはないので嬉しかった。
フレデリック王太子殿下は、シーモア王国の時と変わらずに、週2回は私に会いに使用で訪れる。
フレデリック王太子殿下の歓迎パーティーの3日後、執務室でリオ様と政務をしているとフレデリック王太子殿下が来た。
「アンネ、会いたかったよ。」
リオ様を無視して、私に抱きついて来ようとするフレデリック王太子殿下をかわす。
「フレデリック、何の用だ。私とアンネは仕事中だ。」
「ああ、リオネルもいたんだね。僕にはアンネしか見えなかったよ。もちろん、僕の愛するアンネに会いたくて会いに来たんだよ。」
「私が見えないわけがないだろう。アンネはフレデリックのじゃない、私の妃だ。仕事の邪魔だから帰れ。」
「僕の妃になってくれるかもしれないじゃん。仕事が終わるまで待ってるよ。アンネ。」
「まだまだ仕事は終わりませんよ。待っていても長いので、お帰りにになられた方がいいです。」
「本当にアンネは釣れないな。僕はアンネをこんなに愛してるのに。アンネの仕事してる姿を見ているのも幸せだから、ここにいるよ。」
「仕事している姿は退屈ですよ。それに、機密資料もあります。あまり見ないでください。」
「あぁ、そうだよね。でも、ここに座ってる僕からは書類の中身までは見えないし、大丈夫だよ。」
「じーっと見られてると、私の気が散ります。」
「僕の事を意識してくれてるの?」
「なんで、そうなるのですか。」
「アンネも仕事の邪魔って言ってるだろ。フレデリック。早く帰れ。」
「なんか僕の扱い、前よりも酷くない?」
「前は、私は平民でしたが、今は王太子妃ですからね。」
「僕の王太子妃になって欲しいのになぁ。」
「フレデリック王太子殿下はボーフォート王国に来ても変わりませんね。」
「国が違っても僕は僕だよ。別人になんてなるわけないよ。」
「そうですね。」と私は微笑んで、「少し休憩します。」と言った。
リオ様も「私も休憩しよう」とフレデリックがいるソファの方に行き、私と並んで座った。
すぐに侍女が飲み物を用意してくれる。
「アンネ、やっぱり顔色悪いよね。無理してない?」
「寝てるのも辛いので、まだ仕事をしていた方が気が紛れるのです。ご心配ありがとうございます。」
「私もアンネには無理をしないように言ってるのだが、この調子なのだ。」
「アンネはレティシアを妊娠中で辛そうな時も、働いていたものね。頑張り屋さんなのは、アンネのいいところだけど、頑張りすぎないのも大切だよ。」
「横になりたい時は、横になるようにしています。でも、リオ様にもフレデリック王太子殿下にもご心配いただいているので、もう少し休むようにしますね。最近眠いことも多くて、これからはお昼寝もさせてもらいますね。」
「アンネは夜も気分が悪くて起きて吐いてしまう事が多いから、あまり眠れていないものな。政務は私が代わりにやるから、昼でもしっかり眠れ。」
「僕もアンネの事業手伝うから、しっかり眠ってよ。」
「お二人に手伝ってもらえるとは心強いですね。ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいますね。」
「アンネの子供だったら僕の子供みたいなものだから、元気な赤ちゃんを産んでもらわないとね。」
「何言ってるんだ、アンネと私の子供だ。父親面するな。」
リオ様は私を大切にしてくれる。
私の意思は関係なく、帰国になってしまった時は落ち込みもしたけど、毎日私を抱きしめてキスをして、愛してると愛情を表現してくれるリオ様を、愛おしく感じるようになっていった。
ロラン様は私が辛くないか、いつも気にかけてくれる。
フレデリック王太子殿下は帰国してから1ヶ月後に私に会いに来た時に、たまたまリオ様が側にいなくてロラン様と私とフレデリック王太子殿下の3人だけになった。
「アンネ、会いたかったよ。愛してる。」
「ごきげんよう。フレデリック王太子殿下。」
抱きつこうとしてくるフレデリック王太子殿下をかわしながら答える。
「あれ、今日はリオネルはいないんだ。」
「リオ様は会議に行かれています。」
「アンネと2人きりだなんてラッキー。」
フレデリック王太子殿下が嬉しそうに笑う。
「2人っきりではありません。ロラン様がいます。」
「あぁ、そうだったね。ロランもいつもアンネの護衛、ご苦労。」
「ありがとうございます。アンネリーナ様の護衛をさせていただけることは、この上無いほどの幸運でございます。」
「ロラン様はいつも頼りになって、助かっていますよ。」
「アンネリーナ様。。ありがとうございます。とても嬉しいです。」
「ねえ、アンネ。あの…アンネは大丈夫なの?」
「大丈夫とは?つわりでしたら、最近少しだけ前よりも良くなってきたので、これからはもっと良くなると思うので大丈夫です。ご心配おかけして、すみません。もうちょっと体調が戻ってきたら、フレデリック王太子殿下に手伝っていただいている仕事も、また頑張りますね。」
「あぁ、仕事のことはどうでもいいんだ。ずっと僕がしていてもいいくらいなんだから。つわりは…良くなってきて本当に良かった。アンネの気分がずっと悪そうだったから、それも心配してたんだ。でも、今僕が一番心配してるのはそれじゃなくて、僕の歓迎パーティーの時にアンネが辛そうだったから。。ずっと心配してたんだ。でも、なかなか話せる機会も無くて。。」
「あの時は、私の過去と気持ちを聞いていただき、ありがとうございました。フレデリック王太子殿下がいたから、気持ちがとても軽くなったのです。ありがとうございます。」
「もう、私は大丈夫です。あの時は、正直、私の意思も関係なく、ボーフォート王国へ帰らなければいけなかったこと、過去の思い出と、ご令嬢達の言葉で、冷静でいられず、お見苦しい姿をお見せして、フレデリック王太子殿下を頼ってしまいました。」
「僕の事ならいくらでも、頼ってよ。僕はアンネに頼られると嬉しいよ。それに、見苦しくなんて無いよ。アンネはいつでも世界で一番美しい。愛してるんだ、アンネ。」
フレデリック王太子殿下の美貌を前に、顔が赤くなるのをおさえられない。
「ありがとうございます。フレデリック王太子殿下。でも、私は大丈夫です。リオ様が、私を侮辱した罪であの時のご令嬢達は罰せられて、それ以降は私に聞こえるように、あのような事を言う方はいなくなりましたから。」
「それでも、アンネはこの王宮に…リオネルのそばにいるのは嫌じゃ無いの?」
「今は嫌とは思いません。以前のように、またシーモア王国にいた日々に戻りたいと思うことも、少なくなりました。私にとってシーモア王国にいた日々は、とても大切な思い出ですが、もう既に過去のことなのです。ボーフォート王国から逃れた時のことも、全て過去のこと。今は…、今も幸せです。リオ様は、いつでもお気軽に私に優しく、大切にしてくれています。私も…、そんなリオ様を愛おしく思っているのですよ。だから、大丈夫です。ご心配していただき、ありがとうございます。フレデリック王太子殿下。」
私がフレデリック王太子殿下に微笑むと、「そう…、アンネが幸せなら良かった。」と少し悲しそうにフレデリック王太子殿下が微笑む。
「本当は、アンネが逃げたいって言ったら、アンネを連れてシーモア王国に逃げ出したいくらいだったんだ。でも、アンネが幸せなら、僕は…、それが一番嬉しい。僕はアンネ以外どうでもいいくらい、アンネを大切に想ってる。アンネを妃にしたいと言う気持ちが変わる事は無いけどね。」
それから更に1ヶ月後、私とリオ様は遊び疲れた子供達を絵本を読んだりして、寝かしつけていた。
リオ様は子供達をとても大切にしてくれる。
妊娠5ヶ月の私のお腹も大きくなってきて、お腹の子供に嬉しそうに語りかけてくれるリオ様を、私は愛おしく感じるようになっていた。
子供達が眠ったのを確認した私は、リオ様に話しかけた。
「リオ様、いつも私と子供達を大切にしてくださり、ありがとうございます。」
「それはこちらのセリフだよ。いつもありがとう、アンネ。」
「私、今とても幸せなのです。リオ様。」
「嬉しい。ありがとうアンネ。私も凄く幸せだ。」
「愛しています、リオ様。」
私の方からリオ様に愛してると言ったのは、ボーフォート王国から逃げる前日以来で、4年5ヶ月ぶりだ。
リオ様は驚いた顔をして固まった後に、私を抱きしめた。
逃げる前の生活も、リオ様からたくさん愛してると言われてから、私も愛してるとは言っていたけど、私の方から愛してると言ったのは、ほとんど無かったように思う。
「私も愛してる!アンネ!」
「…泣いてるのですか?リオ様。」
「幸せすぎて、涙が出てしまった。この幸せを失うのが怖い。もう二度と、私の前からいなくならないでくれ、アンネ。」
「リオ様。。私は、私と子供達をいつも大切にしてくださるリオ様を堪らなく、愛おしく思うのです。ずっとお側にいさせてくださいませ、リオ様。」
「ああ、ずっと一緒だ。アンネ。何があろうとも。」
愛する家族に囲まれて、幸せな時だった。




