37.帰国とその後
4年3ヶ月ぶりにボーフォート王国へ帰ってきた。
リオ様との再会から2週間後に出発して、2ヶ月と2週間かけて帰国した。
ここ2週間程で私の体調は悪くなってきて、移動速度が落ちて迷惑をかけたのに、みんな私の体調を気遣ってくれた。
子供達、リオ様、シルヴァン様、フレデリック王太子殿下と王宮に着くと、両親、ニコラお兄様、ロラン様が出迎えてくれた。
「アンナ、会いたかった!」
「私もです。ニコラお兄様。」
ニコラお兄様と抱き合う。
「元気そうで良かった、アンネ。最後に見た時のアンネは…凄く辛そうで、ずっと心配してたんだよ。」
「ご心配をおかけして、すみませんでした。ニコラお兄様、お父様、お母様、ロラン様もお元気で安心しました。」
「いいんだよ。アンネが元気に帰って来てくれたことが、とても嬉しい。」
お父様、お母様とも、抱擁を交わして、お互いに元気であった事を喜びあった。
「シルヴァンにも、アンネがお世話になったね。」
「こちらこそ、アンネリーナ王太子妃殿下にはお世話になりました。4年間、人生で一番幸せな時でした。」
「本当に、私はシルヴァン様に4年間ずっと支えていただき、感謝してもしきれません。私にとっても今までで一番穏やかな幸せな日々でした。」
「ロラン様も、ご心配をおかけいたしました。ロラン様がいなければ、私は今、この世にいなかったかもしれません。ずっと、あなたにお礼を言いたかったのです。ありがとうございます。ロラン様。心からの感謝をあなたに。」
「もったいないお言葉です。アンネリーナ王太子妃殿下がご無事でご帰還されたことが、これ以上なく嬉しいです。アンネリーナ王太子妃と離れてから、アンネリーナ王太子妃を思わない日は1日たりともありませんでした。また、アンネリーナ王太子妃のお側でお守りできる光栄に感謝いたします。」
ロラン様が跪く。
「私の全てを捧げ、アンネリーナ王太子殿下を必ずお守りすると、この剣に誓います。」
「ありがとうございます。私もあなたの忠誠に報いるよう、努めると誓いましょう。これからまた、よろしくお願いいたしますね。ロラン様。」
ジョエルとレティシアを見て、「アンネも母親になったんだね。」と、お母様、お父様、お兄様が喜んでくれた。
ロラン様はジョエルとレティシアも必ず守ると誓ってくれて、心強かった。
「アンネ、そちらのお方は、もしかして。。」
ニコラお兄様が、フレデリック王太子殿下の事を聞いてくる。
「シーモア王国のフレデリック王太子殿下です。」
「お初にお目にかかります。お義父さま、お義母さま、お義兄さま。フレデリック シーモアです。アンネリーナ王太子妃殿下には、3年以上前から求婚をさせていただいております。是非、私の事を実の子供のように…」
「フレデリック王太子殿下、おやめください!両親とニコラお兄様が驚いております。それにいつもと話し方が違いすぎませんか?」
「えっ、でも第一印象は大切だよ。アンネの家族には気に入ってもらわないと。アンネの大切な家族は僕にとっても大切なんだから。アンネに僕の妃になってもらうためにも大切でしょ。」
「私はリオ様の妃だと、いつも申し上げてます。」
「人の心は変わるでしょ。アンネ。…お義父さま、お義母さま、私はアンネリーナ様ただ1人を生涯、愛し抜くと誓います。必ず幸せにしてみせますので、私とアンネリーナ様の結婚の許可をいただけませんでしょうか。」
「やめろ、アンネに言い寄るな、フレデリック。キャペリー伯爵、この男の言う事は気にするな。」
「アンネのご両親に結婚の許可をいただけるチャンスなのに邪魔しないでよ。」
「邪魔するに決まってるだろう。アンネは私の妃だ。」
「だからアンネに選んでもらえるように努力してるんだよ。誰かと違って、僕はアンネを無理矢理僕のものにしないからね。」
「喧嘩売ってるのか。」
両親が呆気に取られている。
ニコラお兄様は臣下の礼をとり、
「フレデリック王太子殿下、ボーフォート王国で宰相をしております、ニコラ キャペリーにございます。フレデリック王太子殿下のご高名は、シーモア王国から遠く離れたこの地、ボーフォート王国でもかねがね伺っております。フレデリック王太子殿下のご訪国、宰相として心より歓迎申し上げます。また、多くのご助力をいただき、妹がいつも、お世話になっております。」
「こちらこそ、アンネにはいつもお世話になっております。ニコラお義兄さまの歓迎、感謝致します。しかし、私たちは家族になるのですから、お気を遣わなくて大丈夫ですよ。アンネのご家族は、私にとっても家族のような…」
「おい、フレデリックがアンネの家族になることなど無い。アンネの家族は私だ。」
「アンネがリオネルにいつ愛想を尽かすか分からないでしょ。いつでもチャンスを無駄にしないように準備しておかなきゃね。」
「フレデリック王太子殿下が妹にプロポーズされていると言うお噂は本当だったのですね。そして、リオネル王太子殿下が他人にこのように接しているのは初めてお見受け致しました。」
「こいつが、いつもこんな調子のせいだ。私のアンネを隙あらば奪おうとしてくる。私がアンネを手放す事など、絶対に無いというのに。」
「フレデリックだって、早くアンネを僕にちょうだいよ。」
またいつもの2人の言い合いが始まり、最近はこの2人、仲がいいのではと思うようになって来ている。
久々の再会は嬉しいけど、気分が悪くなってきたので、声をかける。
「あの、少し疲れてしまいましたので、先に休んでもよろしいですか?」
「あぁ、アンネ、気が利かなくてすまない。もちろん、休んでくれ。少し、顔色も良く無いな。部屋まで送ろう。私達はこれで失礼する。出迎えご苦労様だった。私の留守をよく守ってくれた。頼れる部下がいて心強い。報告はまた後で聞く。」
「フレデリック王太子殿下、シルヴァンを客間へご案内しろ。」とリオ様が侍女に命じる。
「お出迎えありがとうございました。一度、失礼いたします。また夕食時にお会い致しましょう。」
リオ様にエスコートされて歩き始め、ロラン様がすぐ側を着いてくる。
ロラン様が側にいるのは久しぶりだけど、安心する。
「ありがとうございます。リオ様。」
「すぐに医師を手配しよう。ここのところアンネは体調が悪いようだから。もしかしたら…その…妊娠しているのでは無いかと思うのだ。」
「ええ。最近月のものも来ていませんし、私もお医者様に診ていただきたいです。」
部屋に着くとすぐに医師が呼ばれ、診てもらう事ができた。
最後の生理が2ヶ月前なので、妊娠3ヶ月だろうと言われた。
「アンネのお腹に私の子供がいると思うと、本当に嬉しい。ありがとう。なんて愛おしいのだろう。」
赤ちゃんがいるであろうお腹を愛おしそうに触るリオ様。
気分が悪いのと生理が遅れていることから、妊娠してるのではと思うが、まだお腹を見ただけではぺったんこなので分からない。
それからのリオ様は、凄く過保護になった。
私が転ばないか、体調が悪く無いか、そわそわとしている。
夕食で、再度みんなで集まった時に、リオ様があまりにそわそわして、
「食べられそうか?」「気分は悪くないか?」「辛くないか?」「無理をしないでくれ。」
と何度も私に話しかけるものだから、ついにニコラお兄様から
「ねえ、アンネ、妊娠してるの?」と直球で聞かれて、早々に打ち明ける事になってしまい、皆からの祝福を受ける。
「最近アンネ体調悪そうで、食欲も無いし、そうかなって思ってたけど、流石に聞きづらかったからなぁ。おめでとう、アンネ。次はリオネルとの子供じゃなくて、僕と子供作ろうよ。僕もアンネとの子供が欲しい。」
「アンネは私の妃だと何度も言ってるだろう。フレデリックとの子供ができるはずもない。お前がシーモア王国の王太子でなければ追い返してるのに。」
また、いつもの言い合いが始まる。
フレデリック王太子殿下は王宮から近い屋敷に住んで学院に通い研究をしながら、王太子としての政務をこなしていた。
その上で、私の会社の事業にも大きく貢献をしてくれている。
シーモア王国にいた時と同じように、私と会談で会うことも多い上に、週2回は私用で私を訪れて来ていた。
シーモア王国で初めて出会ってから4年間、変わらないフレデリック王太子殿下がいることは、私にとって当たり前の日常になっていた。
いつもリオ様に「アンネに近寄るな」と言われ、私からは軽くあしらわれていても、フレデリック王太子殿下が全く動じないのはいつものことだ。
私の会社の事業で、シーモア王国とボーフォート王国で鉄道が敷かれ、蒸気機関車が走り始めた。
7ヶ月後、私が22歳、リオ様が24歳の時に、大勢の人に祝福され、フロランス第一王女を出産した。
蒸気機関車を走らせる鉄道をシーモア王国とボーフォート王国にかけて敷く事業のために、シーモア王国とボーフォート王国の間にある国々を訪れて回った。
黒い煙を出す蒸気機関車は恐れられ、反対される声も多かったが、利便性を強くアピールし、少しずつ鉄道を敷いてもいいと言ってくれている国も増えて来た。
世界初の蒸気機関車をシーモア王国、ボーフォート王国に走らせることにより、どれだけの経済発展を遂げているのかも強調した。
世界で一位、二位を争う大国のシーモア王国とボーフォート王国の王太子自らが、相手国に出向き、王族、貴族、地主を説得して回っていることも大きかった。
それからは世界中で鉄道が走るようになり、船も私の会社が開発した蒸気船が運航するようになった。
その後も、たくさんの子供に恵まれ、幸せな家庭を築いた。
後に、優秀なジョエルに多くの指示が集まり、ジョエルが王位継承をする事となった。
私の会社は巨額の資金を投資し、シーモア王国とボーフォート王国を中心に産業革命を引き起こした。
フレデリック王太子殿下がボーフォート王国で成した功績も大きく、その影響は世界中へと渡って行き、人々の暮らしは大きく変化していく事となった。




