21.アンネの結婚式
私とリオ様の結婚式は、ジネット様との時程では無いが、盛大に行われた。
私の花嫁姿を見たリオ様が「本当に綺麗だ、アンネ。美しすぎて、他の人に見せたく無いのに、みんなに自慢したくなってしまう。」と悩んでいた。
リオ様もいつもにも増してカッコよくて、見惚れてしまう。
国で一番の美貌と言われる理由がよく分かる。
私の体調もほとんど戻っていて、多くの人に祝福されるのがとても嬉しい。
リオ様も嬉しそうに私を見て、微笑む。
誓いのキスをして、会場が拍手に包まれる。
披露宴で、他国の王族との話も盛り上がる。
「アンネリーナ妃殿下は我が国の言葉をとても流暢に話し、博識なので驚きました。ジネット妃殿下は言葉も話せないし、教養もありませんでしたので、アンネリーナ妃殿下が正妃では無いのが不思議なくらいです。」
と言われて恐縮してしまった。
たくさんの方と会話をしていると、ジネット王太子妃殿下がこちらにやって来た。
私を睨むと
「リオネル様、いつまで売春婦とおりますの。」
と大きな声で言って、私をエスコートしてる反対側のリオ様の腕に絡みついた。
リオネル様が
「売春婦ではなく、側妃だ。それに、今日は私とアンネリーナの結婚式なのだから、一緒にいるのが当然だ。」
と言うと
「売春婦は売春婦ですわ!リオネル様に体を売ってこのようなところにおりますもの。正妃は私なのですから、私をエスコートするべきですわ。それに、私はこの売春婦を側妃にするなど認めておりませんもの。」
と大声で堂々と言う。
海外からの招待客も多く、皆がびっくりしながらこちらを見ている。
まさか、結婚式でこんなに大声で花嫁を罵倒するとは誰も思わなかっただろう。
「ジネットは気分が悪いようだね。一度控室へ行こう。」
リオ様が慌てた様子で、ジネット王太子妃殿下を連れて控室へ消えていくのを呆然と眺めていた。
周りの視線が痛い。。
どうしようかと思った時に、ロラン様が「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。
ロラン様はいつも私の護衛で側にいてくれる。
騎士の格好はとても似合っていて、ロラン様に見惚れている令嬢も多い。
ロラン様はこんなに優しくて凄くモテるんだろうなと思った。
「いや、今のは大丈夫ではないですね。ジネット王太子妃殿下はいつも凄まじいですが、まさかリオネル王太子殿下の結婚式披露宴ですら、こんな事をするとは。皆さんも驚いておいでですが、流石にこれではジネット王太子妃殿下の頭がおかしいと考えて終わると思いますよ。その、ジネット王太子妃殿下からアンネリーナ様に対する発言は、お気になさらないでください。」
「…はい。びっくりしてしまいました。慰めてくださるのですね。ありがとうございます。気にしないようにしますね。いつも私を守ってくださり、ありがとうございます。ロラン様。」
私が微笑むと、ロラン様も嬉しそうに微笑んで
「私はアンネリーナ様の騎士ですので、お守りするのは当然のことです。この命に替えても、アンネリーナ様の事をお守りすると誓いましょう。」
と言った。
「命に替えられてしまっては困ります。私はロラン様も大切なのですよ。私を守りながら、ロラン様も生きてくださいませ。」
ロラン様は驚いてから少し頬を赤くして、「ありがとうございます。アンネリーナ様の為にも、アンネリーナ様を守りつつ、自分の身も守れるように精進します。」と言ってくれた。
「アンネリーナ様はいつもとても美しいですが、今日は更に美しいですね。私にエスコートをさせていただいても、よろしいですか?」
とロラン様に聞かれて
「もちろんです。ありがとうございます。」
とロラン様にエスコートされながら、挨拶をして回った。
学園で仲のいい令嬢達ともたくさん話をする事ができて嬉しかった。
シルヴァン様の視線が、ずっと私を追っているのが分かる。
ジネット王太子妃殿下とリオ様の結婚式以来、1ヶ月ぶりに見たシルヴァン様を私も目で追いそうになるけれども、必死に我慢した。
それでも、何度もシルヴァン様と目が合う。
私は今日から側妃なのだから、シルヴァン様への恋心は忘れなければと思うのに、シルヴァン様への恋心は忘れられない。
こんなに何度もシルヴァン様の事を見てしまっていては、まだ愛してると言ってしまっているようなものだ。
久しぶりに見れたシルヴァン様を目に焼き付けたいと思ってしまうのだ。
ロラン様は私のシルヴァン様への気持ちを、以前のリオ様との会話で知っている。
「シルヴァン様と少し挨拶するくらいなら、誰もアンネリーナ様を咎めたりしないですよ。リオネル王太子殿下もいない今しか、お話しする事はできないのではないでしょうか。」
ロラン様に後押しをしてもらって、シルヴァン様の近くに移動すると、シルヴァン様が挨拶に来てくれた。
「アンネリーナ王太子妃殿下、この度はリオネル王太子殿下とのご結婚、誠におめでとうございます。本当にお綺麗ですね。」
「ありがとうございます。シルヴァン様。」
愛する人に結婚のお祝いをされるのは辛いものだけれど、久しぶりにシルヴァン様と会話ができていることに喜んでいる自分がいた。
「シルヴァン様とは、学園で生徒会の仕事をご一緒させていただいていたのです。ロラン様。」
「それでシルヴァン様とアンネリーナ王太子妃殿下は交流があるのですね。実は、私も以前は生徒会をシルヴァン様とご一緒させていた事もあるのですよ。その時はリオネル王太子殿下、アンネリーナ様のお兄様のニコラ、トリスタンとも一緒に生徒会をしておりました。」
「まぁ、シルヴァン様、リオネル王太子殿下、トリスタンお兄様だけでなく、ニコラお兄様とも生徒会をされていらっしゃったのですね。お兄様達とは仲がよろしいのですの?」
「ニコラは私と同じ学年で学生時代はよく一緒に遊びましたし、今も遊んだりしていますよ。シルヴァン様達は私より2歳年下ですが、生徒会ではお世話になりました。」
「いえ、こちらこそロラン先輩にはお世話になりました。そして、今も騎士団でお世話になっております。」
「シルヴァン様とロラン様は騎士団で働いていらっしゃるので、関わる事も多いですよね。」
「シルヴァン様は第一騎士団に所属しているので部署は違いますが、とても優秀だと聞いていますよ。」
「そうなのですね、嬉しいです。シルヴァン様は強くて、お優しくて、頭が良くて、頼りになって、騎士団でご活躍されてる姿が想像できます。」
シルヴァン様の美しい顔が赤くなり
「アンネリーナ王太子妃殿下、気持ちは嬉しいのですが、流石にそこまで褒めていただけると、少し恥ずかしくも感じてしまいます。それにまだ20歳という若さで第3騎士団副団長になられたロラン様の方が優秀ですよ。ロラン様に憧れる騎士は多いですし、私もその1人ですから。」
「私ったら久しぶりにシルヴァン様とお話ができて、舞い上がってしまいました。すみません。」
「謝らないでください。私も久しぶりにアンネリーナ様とお話ができて、舞い上がってしまってるので同じですね。」
私とシルヴァン様はお互いに顔が赤くなってしまい、私は慌てて話題を変える。
「私も最初にお会いした時に、ロラン様が第三騎士団副団長をされていると聞いて驚きました。その若さで副団長は余程優秀ではないと、できません。それなのに、私の専属の騎士をしていただいて、申し訳ないです。」
「アンネリーナ様の護衛は私が強く願い出た事なのです。私はあなたを守りたい。それに、アンネリーナ様の護衛をしたい騎士はとても多いのですよ。」
「そうなのですか?」
「そうですよ。私もアンネリーナ王太子妃殿下の護衛を願い出ましたが、第三騎士団の管轄になったからと断られてしまいました。」
「シルヴァン様が私の護衛に?」
「私もアンネリーナ王太子妃殿下をお守りしたいのです。」
また顔が赤くなってしまい、シルヴァン様から目が離せない。
私が殺されそうになっている事は公には秘密にしているけれど、シルヴァン様なら知っているのかもしれない。
「アンネの護衛は第三騎士団に任せている。シルヴァン。」
リオ様の声が聞こえて、ドキッとしてしまった。
少し怒った口調でシルヴァン様にリオ様が話しかけていた。
「出過ぎた事を申しました。申し訳ございません、リオネル王太子殿下。」
「お戻りになりましたのですね。リオネル王太子殿下。」
「ああ、アンネ。1人にさせてすまない。早くジネットを会場の外に出さなければと思ったら、アンネを1人にしてしまった。控室に連れて行ったら、なかなかジネットが離れてくれなくて困ってしまった。」
「ジネット王太子妃殿下を控室にお連れ下さり、ありがとうございました。大変でしたよね。こちらはロラン様がいてくださったので、大丈夫です。」
「そうか、ロラン、エスコートご苦労だった。アンネ、こちらに。」
「はい、リオネル王太子殿下。」
ふいに後ろから抱きつかれて、びっくりする。
「アンネ、結婚おめでとう。」
「トリスタンお兄様、驚きましたわ。後ろから抱きつかないでくださいませ。」
「驚かせたかったんだ。成功した。リオネル王太子殿下、ご結婚おめでとうございます。」
「アンネから離れろ、トリスタン。兄妹でも側妃に抱きつくのはダメだ。」
「でも、アンネは僕のお嫁さんになるって言っていたんですよ。」
「いくつの時の話ですか、トリスタンお兄様!」
「違うよ、アンネは僕のお嫁さんになるって言ったんだ。」
「ニコラお兄様まで!それは私がうんと小さい頃の話でしょう。」
「結婚おめでとう、アンネ。アンネが結婚してしまうだなんて、寂しくなるよ。王宮では木登りをしてはいけないよ。リオネル王太子殿下、ご結婚おめでとうございます。」
「だから、それはいくつの時の話です。」
「幼少期のアンネか。さぞかし可愛かっただろうな。」
「幼少期のアンネの話、聞きたいですか?もしよければ、今度お話ししますよ。」
「ぜひ、聞きたい。」
「リオ様、幼少期の頃の話は恥ずかしいです。」
「でも、私はアンネの事ならなんでも知りたいのだ。」
「私も、リオ様の事ならなんでも知りたいです。」
トリスタンお兄様と、ニコラお兄様は、王宮の私の部屋によく訪れて、話をしてくれるのでとても嬉しい。
2人と話していると、元気になれるし、剣術もたまに教えてもらってる。
2人とも騎士団顔負けの強さなのに、文官の道に進んだけれど、騎士団でもよく訓練をしているらしい。
ジネット王太子妃殿下の騒ぎでどうなる事かと思ったけど、幸せな結婚式になった。
その夜、私はリオ様と2週間ぶりに結ばれた。
ベッドに押し倒されて、キスをされる。
「私はアンネを抱きたい。ただ、アンネの体調を考えて、ずっと我慢をしていた。一緒に眠るだけと言うのは、忍耐力を試されている気分だった。もう、我慢しなくてもいいだろうか?」
「はい。リオ様。私もリオ様が欲しいです。」
「アンネ、愛してる。辛くなったら、すぐに言ってくれ。優しく…できる自信が我慢しすぎてないが、可能な限り優しくする。」
「愛しています、リオ様。」
「私も愛している、アンネ。」




