20.毒殺未遂
私の暗殺未遂から、騎士団が私の護衛をしてくださるようになった。
お手数をおかけして申し訳なく思うけれど、安心するので助かっている。
暗殺未遂から3日が経つと、私も少しずつ以前のような生活に戻って来ていた。
リオ様はあれから、ジネット嬢のもとへ通うことがなくなり、夜はずっと私に付き添ってくださっていて、日中も政務の合間に度々顔を見せてくれる。
事件のショックで学園を休んでしまったが、明日から学園に通おうと思いながら昼食を食べた。
しばらくすると、なぜか意識が朦朧として来て、私は意識を手放した。
次に目覚めた時には、ベッドの上だった。
繋がれた手を見ると、私の手を握りながらリオ様が眠っていて驚いた。
「…リオ…様?」
うまく声が出せない事に驚く。
「アンネ!?目が覚めたのか!?」
リオ様が驚きながら、私に話しかける。
頭が割れるように痛い。
「…はい。。」
私は昼食を食べていて…それから。。
それからどうしたのだろう。
何もわからない。
「良かった。本当に良かった。もう目覚めないかと思った。アンネを失うなど考えられない。」
「…あ…の。どう…して、私…はここに?」
「あぁ、無理に話さないでくれ。アンネは毒を盛られて3日間意識を失っていたのだ。命が助かるか分からない、目覚めるか分からないと医師から言われて、本当に辛かった。一番辛かったのはアンネなのにすまない。アンネを守ると言いながら、また守れなくて、本当に申し訳ない。目覚めてくれて本当に嬉しい。」
泣いているリオ様を初めて見て、私も涙が出て来た。
「い…いえ。たすけて…いた…だき、あり…」
「無理に話さなくていい。ゆっくり休んでくれ。お腹は空いていないか?今まで何も食べていなかったから、お粥を少ししか出せないが、食べれるのであれば食べさせよう。すぐに準備させる。」
リオ様に起き上がらせてもらい、お粥を口に運んでもらう。
まさか王太子殿下にこんな事をさせるとは申し訳ないのに、優しさが嬉しくて涙が出た。
「食事は毒味を必ずしてから出すようにした。安心して食べるがいい。王族は毒味が必ず必要だが、アンネはまだ王族では無いと思い、毒味をつけなかったのが失敗だった。本当に申し訳ない。」
「しかし、正直ここまでアンネが命を狙われるとは、思っていなかった。王族である私ですら、命を狙われた事など殆どないというのに。」
「私のせいで、申し訳…ありません。」
少しずつ声が出るようになって来た。
「決して、アンネのせいでは無いのだ。謝らないでくれ。謝るのは私の方なのだから。アンネを王宮に連れてこなければ、命を狙われる事など無かった。指示しているのはジネットだろうに、証拠がない。今回の毒について関わった人間は、全員自死していて証言もとれないのだ。」
また自死。。
本当に、指示している人間は人の命など何とも思っていないのだろう。
恐ろしい。
「なぜ、ジネット王太子妃殿下だと…思われたのですか?」
「馬車襲撃の時も、今回の毒も、ジネットを問いただそうとしたら、『売春婦は死にましたの?』と嬉しそうに話をして来た。」
「『まあ、死にませんでしたの。しぶといのですね。死ねば良かったのに。』と言うから、殺そうとしたのか聞くと『私はそんな事はしませんわ。私を疑うのですか?酷い!証拠もなく人を疑うなどおかしいです。私を疑うのであれば証拠を持って来てください!』と自信満々に言われた。」
「実行犯はみんな自死しているから、自分に繋がる証拠など何も無いと思っているのだろう。実際、探しても証拠が出てこなくて本当に困っている。あの女は人の死を喜ぶ人間なのだ。私はもう自分の責務など知った事か。あんな女は2度と抱かない。責務だと思って耐えて来たけれど、これ以上は無理だ。」
ジネット様は本当に恐ろしい人だと思った。
ジネット様という証拠は無いけれど、今の話を聞いて指示しているのはジネット様だろうと私も感じた。
「父に今回の事を話したが、ジネット嬢は疑わしいが証拠がない。証拠も無しに王太子妃に罪にとう事はできないと言われてしまった。しかし、もうジネット嬢を抱くことは無いと言ったら、ジネット嬢との間に第一王子を作らない限り、アンネとの子供はダメだと言われた。それなら私には子供はいりません。と言ったら怒っていた。」
リオ様が辛そうに言う。
「私はアンネとの子供が欲しい。。だが、ジネットとの間に王子を儲けなければ、アンネとの子供を作れないのであれば、子供すらいらないのではと思ってしまう。私にはアンネさえいればいいのだ。アンネ以外何も望まない。私の身勝手な考えを許してはくれるだろうか。」
「私もリオ様との子供が欲しいです。王命で妊娠しないように薬を飲んでいる間は子供はできないでしょう。ですが、ジネット王太子妃殿下とリオ様に子供ができるのは、辛いのです。私もリオ様さえいれば子供もいりません。」
「こんな事を言わせてしまってすまない。自分が不甲斐ない。しかし、私は権力を手に入れるように努力をする。スタンリー公爵家をしのぐ力を手に入れて、こんな薬などアンネが飲まなくていいようにしよう。もう2度とジネットは抱かないが、私はアンネとの子供を諦めたわけでは無い。」
「ありがとうございます。リオ様の気持ちが凄く嬉しいです。」
それからの私は自分で動けるようになるまで、リオ様に手伝ってもらいながら生活をした。
「リオ様、ずっと私に付き添っていただかなくても大丈夫ですよ。政務でお忙しいでしょう。」
「私がアンネと片時も離れたく無いのだ。私の我儘を聞いてくれ。政務はこの部屋でしている。必要な時は執務室へ行くが、可能な限りはこの部屋で仕事をしているから安心してくれ。」
「ありがとうございます。私も、リオ様がいると心強いです。」
「アンネ以上に大切なものなど何もない。目を開けないアンネをずっと眺めているのは辛かった。今はアンネが目を覚ましてくれたことに、感謝してもしきれない。もう2度とこんなことの起こらないように、護衛と毒味は信用できる人物を選んだ。」
「何から何まで、ありがとうございます。リオ様。」
「アンネをこんな目に合わせて、本当に許せない。しかし、今はゆっくり休んで早く良くなっておくれ。私は元気なアンネが見たい。」
「それに…1週間後は待ち望んでいた私とアンネの結婚式だ。ついに私達は夫婦になれると思うと、嬉しくて仕方がない。」
「私も嬉しいです。リオ様。」
「ありがとう、アンネ。愛してる。」
「私も愛しています。私、リオ様と素敵な結婚式を挙げられるように、リハビリ頑張りますね。」
私はリハビリを頑張って、食事も出来るだけ摂るようにして、みるみるうちに回復して行った。
ロラン様は私専属の騎士になって、常に側にいて私を護衛をしてくれるようになった。
ロラン様がお休みの時は、他の騎士が交代で護衛をしてくれる。
申し訳なく思い、王宮の中なのに護衛は必要なのかと聞くと、私は命が狙われてるから王宮の中だから安全だとは限らない。
また王宮内で殺そうとしてくるかもしれないと言われた。
一度、ロラン様の前でリオ様が私にキスを始めた時は恥ずかしくて、人払いをお願いした。
それ以降はリオ様と2人きりの時などは人払いをして、扉の外で護衛してくれている事も多い。
リハビリで歩こうとした時にふらついてしまい、ロラン様が支えてくれた。
側で政務をしていたリオ様がすかさず飛んできて、「アンネは私が支える。」と、私の事をリオ様が言った。
「お仕事の邪魔をするわけには…」
と言うと、
「他の男がアンネに触れるのは我慢できない。私が付き添うから無理の無い程度に歩こう。本当はアンネの護衛とは言え、他の男がアンネのそばにいるのは嫌なんだ。でも、アンネが殺されてしまうのであれば、護衛をアンネに近づけないわけにはいかないから困ってる。」
と言って付き添いながら、一緒にゆっくりと歩いてくれる。
「私が愛しているのはリオ様です。」
「シルヴァンは…」
リオ様がぼそりと呟いたので、驚いて私の足が止まる。
ずっと会いたいと願っていたシルヴァン様の名前を聞いて、動揺しながらリオ様を見る。
「すまぬ。そんな困った顔をするな。アンネがシルヴァンを愛していると知っていて、無理矢理王宮へ連れて来たのは私だ。つまらぬ嫉妬をした。忘れてくれ。」
リオ様が傷ついた顔をしながら言うから、私は何も言えずに、またゆっくりと歩き始めた。
シルヴァン様の事はもう愛していない、リオ様だけを愛していると言えなかった。
私は今でもシルヴァン様に会いたいのだと気がついてしまって、胸が痛い。
お父様、お母様、お兄様もお見舞いに来てくれた。
トリスタンお兄様は2人きりになった時に、私にここから一緒に逃げようと言った。
このままここにいたら、私が死んでしまうのではないかと心配してくれた。
アンネを救えるのなら身分を捨ててもいい、2人で平民になるのもいいかもしれないと言ってくれた。
王命に逆らって逃げるなど、考えたこともなかったけど、トリスタンお兄様の気持ちが嬉しかった。
毒殺、襲撃に備えて守ってもらっているから大丈夫、逃げないと伝えると必ず死んではいけないと言って去って行った。




