表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

保健室(ゆうき)

「——あっ」


誰かの声。


次の瞬間。


ドンッ、と鈍い音。


視界が一瞬揺れる。


(……え)


床が近い。


遅れて、痛み。


「ごめん!!」


猫ちゃんの声が響く。


「大丈夫!?当たった!?え、当たったよね!?」


一気に距離を詰めてくる。


「……当たった」


「だよね!?ごめんほんとごめん!!」


「ちょっと落ち着いて」


スイが間に入る。


「頭打ってる?」


「……いや、大丈夫」


「大丈夫じゃないでしょ」


アムネが顔を覗き込む。


「一応、保健室行こ」


その声はさっきより少しだけ真面目だった。


「でも——」


「念のため」


スイが続ける。


「行っといた方がいい」


(……そこまで言うなら)


「わかった」



廊下。


少しだけ静か。


昼休みの終わりが近い。


「ほんとごめんね!」


猫ちゃんが横でまだ言ってる。


「あとでなんか奢るから!」


「いいって」


「よくない!」


「……元気だね」


「それが取り柄!」


即答。


少しだけ、笑いそうになる。


保健室の前。


アムネがノックもそこそこにドアを開ける。


「失礼しまーす」


中は、落ち着いた空気。


白いベッドと、カーテン。


そして——


「アムネさん、今日も来たんですか?」


柔らかい声。


白衣の男性がこちらを見る。


穏やかな笑顔。


「先生には内緒にしておきますね」


(……今日も?)


「ちょっと!語弊あるって!」


アムネがすぐに反応する。


「今回はちゃんとしたやつだから!」


「そうなんですか?」


くすっと笑う。


どこか余裕のある反応。


「で、どうしました?」


自然に話を戻す。


「この子、ボール当たって」


スイが説明する。


「頭を少し」


「なるほど」


ゆうき先生が近づく。


「座れますか?」


やわらかい声。


言われるまま座る。


「どのあたりですか?」


「……ここ」


軽く触れる。


「強く打ちました?」


「そこまでじゃないと思う」


「そうですか」


頷きながら。


視線はしっかり観察している。


「気分悪くないですか?」


「大丈夫」


「吐き気は?」


「ない」


「わかりました」


小さく息をつく。


そのまま——


「アムネさん」


ちらっと横を見る。


「今回は本当に付き添いですか?」


少しだけ意味のある言い方。


「だから違うって!」


「ふふ」


軽く笑う。


(……なんだこの人)


優しいのに。


少しだけ、見透かされてる感じがする。


「少し安静にしておきましょうか」


ゆうき先生がカーテンの方を見る。


「昼休みも終わりそうですし」


「……はい」


自然に返事が出る。


その横で。


「ほんとごめんね……」


猫ちゃんが小さく言う。


さっきよりトーンが落ちてる。


「いいって」


「あとでなんかするから」


「それ重いって」


アムネがツッコむ。


「うるさい!」


すぐに戻るテンション。


スイが小さく笑う。


そのやり取りを——


ゆうき先生が静かに見ている。


少しだけ目を細めて。


「……にぎやかですね」


ぽつりと。


「いいクラスだと思いますよ」


その言い方が。


なぜか、少しだけ引っかかった。


(……なんだろう)


ただの感想のはずなのに。


少しだけ。


意味があるように聞こえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ