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Avvy新聞 昼休み

昼休み。


チャイムが鳴った瞬間、教室の空気が一気に緩む。


椅子が動く音。

弁当の蓋を開ける音。

どこかで購買へ走る声。


いつもの昼休み。


「よし、飯!」


アムネが勢いよく立ち上がる。


「元気だね」


スイが苦笑する。


「昼休みだよ!?昼休みは元気になるものでしょ!」


「朝から元気だったけど」


「それはそう!」


即答。


結局いつものように机を寄せる。


アビィ。

アムネ。

スイ。


昼の定位置。


弁当を開ける。


そのとき。


「ねぇねぇねぇ!」


聞き覚えのある声。


振り向く前にわかる。


猫ちゃんだった。


「新聞見た!?見たよね!?今朝めっちゃ人いたじゃん!」


勢いのまま近付いてくる。


「見た」


スイが答える。


「ゆるりちゃん載ってたやつ!」


「そうそれ!」


猫ちゃんが机を叩く。


「やばくない!?めっちゃ本人だった!」


「本人だったね」


アムネが笑う。


「ていうか絶対盛ってない?」


「盛ってないと思う」


「むしろ控えめだったと思う」


スイが言う。


「え、そんななの!?」


猫ちゃんが驚く。


その反応にアムネが吹き出した。


「昨日会ったけど、あれで結構抑えてた方だよ」


「うそでしょ」


「ほんとほんと」


「軽音部怖い」


「怖くないって!」


笑いが起きる。


教室の空気も混ざる。


周りでは新聞の話をしているグループもまだ多い。


「カルタ部も載ってたね」


スイが言う。


「見た見た!」


猫ちゃんが頷く。


「ももね部長載ってたし、おむたろも写ってた!」


「おむたろめっちゃピースしてた」


アムネが笑う。


「アイツ絶対狙ってるよね」


「わかる」


猫ちゃんも笑う。


そんな会話が続く。


ふと。


猫ちゃんがこちらを見る。


「そういえばさ」


少しだけ声のトーンが変わる。


「アビィちゃんもそのうち載りそう」


一瞬。


沈黙。


「え?」


アムネが先に反応する。


「なんで?」


「だって転校生だし」


猫ちゃんが言う。


「しかも最近いろんなところいるじゃん」


「カルタ部行って」


指を一本立てる。


「昨日は軽音部行って」


二本目。


「しかもゆるりちゃん特集の次の週でしょ?」


三本目。


「絶対目つけられてるって」


「目つけられてるって言い方」


スイが苦笑する。


でも否定はしなかった。


「まあ可能性はあるかもね」


「あるよね!?」


猫ちゃんが乗る。


「だって120そういうの好きそうじゃん!」


「人を見るタイプではあると思う」


スイが頷く。


アムネがこちらを見る。


「実際来たんでしょ?」


「……来た」


「やっぱり!」


食いつく。


「何聞かれたの!?」


「転校のこととか」


「うわー」


猫ちゃんが天井を見上げる。


「めっちゃ聞かれそう」


「趣味とかも」


「それ普通の取材じゃん」


スイが言う。


「でも転校のこと聞くのはちょっと踏み込んでるね」


「まあ気になるんじゃない?」


猫ちゃんが言う。


「三年の五月だし」


その言葉で。


少しだけ空気が静かになる。


ほんの一瞬。


アムネがすぐに話題を変えた。


「そういえば猫ちゃん、軽音入らないの?」


「あー」


猫ちゃんが笑う。


「私はバスケ好きだからなー」


肩を竦める。


「でもゆるりちゃんの歌は聴きたい」


「それはわかる」


スイが頷く。


「昨日すごかったよ」


「そんなに?」


「そんなに」


アムネが即答する。


「えー気になるー!」


猫ちゃんが机に突っ伏す。


「今度文化祭とかでやんないかな」


「ありそう」


「絶対人集まる」


会話はまた軽くなっていく。


でも。


アビィの頭の片隅には。


朝のメッセージが残っていた。


120。


顔も知らない相手。


なのに。


なぜか自分を見ている。


転校してきてまだそんなに経っていない。


それなのに。


カルタ部。


軽音部。


気付けば少しずつ人が増えていた。


「聞いてる?」


アムネの声。


顔を上げる。


「今度また軽音行こうって話」


「紅ちゃん絶対喜ぶよ」


猫ちゃんが笑う。


「アムネ先輩好きオーラすごかったし」


「わかる」


スイも頷く。


「昨日ずっとテンション高かった」


「いやあれは元々じゃない?」


「それもある」


笑いが起きる。


窓の外から風が入る。


紙が少し揺れる。


昼休みのざわめき。


いつもの学校。


だけど。


少し前までは知らなかった名前が増えている。


ゆるり。


紅。


Rizz。


すまきゃ。


グレイ。


そして。


120。


昼休みはまだ終わらない。


でも。


何かが少しずつ動き始めている気がした。

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